ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

東京二期会公演「蝶々夫人」@東京文化会館

140426 4日間公演の3日目、腰越組の2日目を見に行った。今回は1回のど真ん中で、ゆったり鑑賞できた。

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こんな素晴らしい舞台を1万円で見られるなんて、何だか申し訳ないような気分になった。それほど見事な上演だったと思う。

若いルスティオーニ、噂以上に凄かったし、オケも甘美かつダイナミックなサウンドを奏で続けていたが、腰越満美さんの蝶々さんが入魂の名演唱で、参りました!この方、大柄だし、お顔もどちらかと言うとあちら風なので、15歳のかわゆい蝶々さんという訳ではないのだが、歌唱・演技とも抜群で、言うことなし。

スズキの永井和子さん、ダテに年季だけ入っている訳でないことを見事に立証された舞台だった。とりわけて、演技の巧さが一番光っていた気がするなぁ。この人の動き一つ一つ見ているだけで、涙が出て来るシーン、少なからず。

男性陣では、バリトン福島明也さんは評判通りで、文句なし。ピンケルトンの水船桂太郎さん、相変わらず甘いマスクで女性ファンから絶賛されているようだが、高音も楽に出て、悪くない。ただ、前半はもう少しギラギラしたものを出せたらもっとよかったと思う。ちょっといい子過ぎと言うか、優等生風のピンケルトンで、若干もの足らなさも。

総じて、これらはとりもなおさず、栗山演出の大成功ということでしょう。どの場面も出演者の動きにまったく無駄がなく、しかも自然で、感服しまくり。一例を挙げれば「花の二重唱」など、演出次第で随分居心地が悪くなったりするものだが、この舞台はこれまでのどの公演より無理のないスムーズな動きで、すーっと腑に落ちたねぇ。

勿論、終幕の蝶々さんが「かわいい坊や」を歌い、自害して果てる場面も、なんと切なくも美しい!と。生々しい赤い色は一切排して、上から銀いろの吹雪が舞い落ちるという、何と言うか、神々しいまでの終わり方に、しばし拍手を忘れて、恥ずかしながら、ただ涙、滂沱あるのみ。

多分、見ていない木下組も勝るとも劣らない名上演だったのではないかしらん。両方鑑賞した人に、後で是非比較感想を聞いてみたい。

 

#16