ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「サード・パーソン」

140620  原題もTHIRD PERSON  監督・脚本:ポール・ハギス [出]リアム・ニーソン、ミラ・クニスエイドリアン・ブロディ、ジェームス・フランコ、マリア・ベッロ、キム・ベイジンガーと結構多彩。

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名作「クラッシュ」(2004 原案・製作・脚本・監督)のポール・ハギスが作った群像劇なら面白くない訳はないと早速、封切り日に見に行った。今回は舞台をニューヨーク、パリ、ローマ(一部、南イタリア)に設定、3組の男女,家族に焦点を当てて描く。

クラッシュ」より更に複雑な構成で、しばしば今はどこの場面か分からなくなるから、予めポイントだけ押さえておく必要がある。パリの高級ホテルの一室の筈なのに、ニューヨークの高級ホテルで働いている元女優ミラ・クニスが紛れ込んだり、パリにいる筈のリビア・ワイルドが、ローマを走るタクシー内にいたり、ニューヨークでジェームス・フランコが描いている作品が、ローマに展示してあるなど、観客を混乱させる仕掛けがあちこちに。こういうところを分かって上げないと作る側は不満だろう。

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ローマで展開する話は、自称ビジネスマン、実はかなりいかがわしい商売をしているエイドリアン・ブロディが、偶然入ったバーで見かけた、一見するだにケバい女(モラン・アティアス⬆)に心惹かれてしまう。その上、身の危険を顧みず、深入りしていき、彼女の娘が誘拐されている南イタリアまで行った挙げ句、大金まで貢いでしまうところが、かなりゆるい設定だ。だが、これも巧みな伏線が仕掛けられていて、後になって徐々に分かって来るのだが。

後段、多くの???マークが次第に解明されていくところが、実にハギスらしい巧みさで、「どうだ、どこまで俺の仕掛けが分かる?」と見る者に問いかける、というか挑戦しているような印象を受ける。最後の最後に謎解きが完結する趣向は、いかにもハギスらしい。

家族の絆と言ってしまえば余りにありきたりだが、どの話にも、そこに子供が重要な役割を演じている。”ウォッチ・ミー”がキーワードになっている。夫婦、親子、家族間の愛がテーマであることは、間違いない。

英語、フランス語、イタリア語がほぼ均等に飛び交うのが痛快である。モラン・アティアスの演じる役は、ジプシーだが、実際そうなのではないかと疑うほどジプシーになり切っている。ルーマニア辺りの出身かと思ったら、さにあらず。何とイスラエル人。イタリア語も完璧。彼女の他の作品の写真を見るとかなり違った印象。多分、メークが成功したということだろう。

ブロディとアティアスが出会うBAR AMERICANOのすこぶる感じの悪い店員、こんな端役を、今やイタリアで絶大な人気のリッカルド・スカマルチョ(「あしたのパスタはアルデンテ」、「ローマでアモーレ」)が演じている。

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同じく端役の⬆キム・ベイジンガーさんも、今や還暦を過ぎて、皺が大いに目立つ。それを大写しにするんだから、ハギスも人が悪い。ウクライナ出身のミラ・クニス⬇、本作では不発。まったく魅力が感じられない。彼女との共演は4度目というジェームス・フランコもちょっとしか出ない。メタボ気味。メタボと言えば、リアム・ニーソン、でっぷりしたお腹が醜い。こうした豪華な配役陣もハギスの作品ならどんな端役でも、ということだったらしい。さもありなん。

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期待通りの作品だった。

#51 画像はALLCINEMA on lineから