ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

ボストン美術館 ミレー展@三菱一号館美術館

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ブロガー内覧会へ出席。まずは高橋館長からの挨拶に続いて、この展覧会の担当である安井学芸員から詳しい説明を40分ほど伺った。その後、自由鑑賞と写真撮影の時間が小一時間。いつものごとく、大変有意義に楽しませていただいた。

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⬆️左が高橋館長、中央が安井学芸員

それにしても、ボストン美術館だけで、ミレーが170点もあると聞いてびっくりだ。その中から厳選し、更にその他の関連画家の作品を加え、60数点が今回の展示作品。多くはないが、どれも逸品揃いで、さすが三菱一号館美術館と感心した次第。

高橋館長から、この後、ワシントン・ナショナル・ギャラリー展、河鍋暁斎展(同館オリジナルの設計者、ジョサイア・コンドル暁斎の弟子だったという因縁)、プラド美術館展と、今年から来年にかけて、目玉の展覧会が目白押しと嬉しいご案内があった。

館長が強調されていたように、やや小ぶりの美術館ゆえの強みを生かして、例えばプラド美術館展など、これまで何度か国内で開催されているが、ここで展示する以上、大作は避けて、これまでになかった”親密さ”を強調する作品を並べたい意向。

さて、ジャン=フランソワ・ミレー。美術関連ブログではカリスマ的存在のTAKさんこと、中村 剛氏が進行役を務めて、安井学芸員から、滅多に聞けないネタ話など含め、多彩な解説が伺えたのが大きな収穫。

ミレーは、丁度200年前の1814年の10月、英仏海峡に面するコタンタン半島の先端部分にある小さな村で生まれた。実家はいわゆる豪農で、比較的豊かな生活を送り、両親のおかげで高い教育もさずけられたそうで、どこか暗い画面の画家としてはやや意外な一面を持つ。

因みに、上のカバーにある「ミレーがまいた、本当の種とは?」だが、種まく人が撒いたのは、小麦とされているが、ノルマンディーやブルターニュあたりでは、そばの方がメインな作物ということから、そばとするのが安井説。もちろん、その後に続く多くの画家に多大な影響を与えたなどの意味も込めたタイトルだろうが、なかなか面白い見立てだ。

構成は、「巨匠ミレー序論」、「フォンテーヌブローの森」、「バルビゾン村」、「家庭の情景」、「ミレー、日本とルドン」、「ミレーの遺産」

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手前は、死別した最初の妻ポリーヌの肖像。右隣はよく見えないが、グリュシー村の生家、奥は1840年頃(26歳頃)の自画像。⬇️

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⬆️「種をまく人」。奥に見える、牛を御する農夫の方に光が当たっていて、手前の主役はむしろ影になっている。同じタイトルの作品が山梨県立美術館にあるが、ほぼ同じサイズで、色調もよく似ていて、二つ並べないと見分けがつかない。「種をまく人」は、キリストが自分を「麦(信仰)の種」、神を信仰という「種」をまく人に喩えた話を絵画化したものだそうだが、1850年のサロン展に出品された。だが、それがボストンのものか、山梨のものか、いまだに論争が続いているというから面白い。

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幼子に編み物を教える場面が2点。左側の作品の2年後ぐらいに描かれたと思われる右側の作品では子供の持つ編棒が2本から3本に増えていると安井学芸員の指摘。さすが鋭い!ちなみにシャルダンも同じモチーフの作品を描いていて、ミレーはそれを意識していた可能性はあるとのこと。

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この一室には、ミレーの影響を受けたと思われる日本人画家の作品が紹介されている。手前が和田英作の「春日山麓」、奥に浅井忠の「花畠」。他に黒田清輝の作品も。

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今回の目玉の一つ、大作《刈り入れ人たちの休息(ルツとボワーズ)》

画像は同館公式サイトからお借りし、自分で撮影した画像については、主催者から特に許可を得て会場で撮影したもの。