ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「はじまりのうた」

150304 BEGIN AGAIN [監]ジョン・カーニー(「ONCE ダブリンの街角で」('06))104分

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ニューヨークの片隅、場末のライブハス。恋人の不倫でセレブ生活も一瞬、今や、友人宅に居候の駆け出しシンガーソングライター、グレタ(キーラ・ナイトリー)は、出演中の友人に無理やり舞台に引っ張り出されて、仕方なく自作の歌をギター片手に歌い出す。

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一方、ビジネスパートナーとの確執で、衝動的に音楽制作会社を辞め、別れた妻との間にできた娘からも馬鹿にされ、今やほとんどホームレスに近い生活をしている、腕利きのプロデューサー、ダン(マーク・ラファロ)が、偶然飛び込んだ店で、グレタの歌を聴き、彼の音楽プロデューサーとしての本能が呼び起こされる。

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そんなドラマティックな冒頭の展開がおしゃれで、どんどん引き込まれる。彼女を売り出そうにも、デモCDも作れないのでは、どこも相手にしてくれない。今や、二人にとって、失うもののない身、それに何でもありのニューヨーク、力説するダンに半信半疑のグレタも”路上録音”に乗ることに。なにせ、パトカーのサイレン、子供の歓声、車の音などみんな録音されちゃうんだからね。ところが、これが思わぬ評判となって・・・。

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久しぶりに見終わって爽快感の残る作品に出会った。

キーラ・ナイトリー[kiːrəˈnaɪtlɪ]だから、断じてナイトレイではないだろう。Knightley, Presley, Linley・・・)が素晴らしい。これまでの作品は、どこかひ弱なお嬢さんやら高貴な夫人などが似合う顔であり、姿だったが(尤もパイレーツ・オブ・カリビアンなどもあるにはあるが)、本作では、実に生身のキーラが全開。エラが張りすぎているだけでなく、歯並びは悪いし、美脚でもないし、それに意外にも短足なのだが、そんなことは気にしない。ラフな格好で自由奔放に演技している。彼女の魅力は何と言っても、その凄い目ヂカラだろう。

それと、亭主(音楽家James Righton)から徹底的にしごかれ、一時気まずくなるほどの猛特訓した甲斐あって、ギターを見事に弾きこなしているばかりか、歌がまた良い。(マリー・ラフォレ風の、ちょっと気だるい歌い方)。この辺の女優魂が素晴らしい。ちょっと見直した。

一方、マーク・ラファロ、見るからにイタリア系のアメリカンで、役の幅が実に広い。つい先日見た「フォックスキャッチャー」では、15kgも増量して天才レスラー役を演じたが、一転、ここでは腕利き音楽プロデューサーで、ギターも弾いたり、相変わらず多芸ぶりをまざまざと見せつける。

それに出てくる曲がどれもすばらしいものばかりで、陶酔の100分だった。

#15 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから