ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「奇跡の2000マイル」

150820 原題:Tracks 豪 112分 [監]ジョン・カラン 2013年の作品。2年遅れの公開。遅いねぇ。

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1977年に、この”難業”を敢行したロビン・デヴィッドソンの原作を基に製作された。主演はミア・ワシコウスカ。この女優、美人でもなければ、スタイルも決していいとは言えないが、抜群の演技力は本作でもいかんなく発揮されていた。

難業とは、オーストラリアのほぼ中央に位置するアリススプリングスから西へおよそ3000km、インド洋まで、愛犬、ラクダ4頭(1頭は子ラクダ)と共に徒歩で踏破すること。

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誰に話しても、大反対。そりゃそうだ、ほとんど砂漠地帯で、あまりにも無鉄砲で、到底成功はおぼつかないと思われたのだが、彼女の決心は揺るがない。なんでそこまで、と思うのだが、人生に行き詰まっていたことは確かであり、また父親も若い頃、冒険家であったことも影響しているだろう。普通の人間でも、挑戦すれば可能なところを見せたかったと言うが、まあ信じられない。

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準備にほぼ1年、ラクダの調教も一通りできるまでになってはいるが、他にいろいろ装備を揃えるのには、資金が要る。考えたのは、ナショナル・ジオグラフィックから資金援助を受けようということ。早速手紙を書くと、受け入れるが、条件があると。それは、一人カメラマンを派遣し、彼女に同行させるというもの。

それが交換条件なら受け入れざるを得ないが、同行は困る。時々会うようにして欲しいと逆に条件をつけ、5週間とか一定期間ごとにカメラマンと会うことで、ついに一歩を踏み出す。

そしてほぼ8ヶ月後、ついに海に達する。感動の風景だ。⬇︎

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しかし、その間、様々な出来事が。中でも、彼女にとって最大の悲劇は、愛犬を失ったことだろう。ある晩、その辺をほっつき歩いていた愛犬が、捨ててあった猛毒のストリキニーネを飲んでしまい、全身痙攣で見ていられず、自ら銃でとどめを刺す。しばらくは茫然自失。無理もない。

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⬆︎在りし日の愛犬とくつろぐロビン。ご覧のように顔もひどい状態。8ヶ月近い旅にもかかわらず髪の長さが一定だったのが不思議。

他に、野生ラクダがどこからともなく現れるが、事前にラクダ調教を伝授してくれた長老から、そういう場合は迷わず銃で撃てと言われていたので、その通りにして、からくも難を逃れている。

眠っている間に巨大な蛇に首を巻かれたり(眠っていて気付かない)、大砂塵に襲われたり、飲み水が切れそうになったりと、文字通り難行苦行の連続。その都度、超人的な意志力で乗り切る姿は感動的である。

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⬆︎途中、アボリジニーの聖地を通るために、同行してくれたアボリジニーの老人から、砂漠で生きて行くテクニックをいろいろ教えてもらう。

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⬆︎カメラマンのリック。寂しさに耐えかねて、彼に甘えてしまったため、勘違いされたり。その気もないのに、挑発したみたいな格好になったのは、彼女の軽はずみだ。ま、でも彼のおかげで奇跡の踏破行を達成できたわけでもあり、感謝してもし尽くせないほどだ。

この撮影が過酷だったろうことは容易に想像できる。また、ワシコウスカは、全身ボロボロになり、驚くほどの俳優魂である。しかも実際ラクダを操れるようになって、自身素晴らしい経験だったと本作に出演できたことを喜んでいたらしい。

尤も、ワシコウスカが生まれる前から映画化に、並々ならぬ意欲を示していたのはジュリア・ロバーツや、ワシコウスカ同様、豪人のニコール・キッドマンだったとか。結果論だが、ワシコウスカで正解だろう。

#68 画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineから。