ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

音楽ビアプラザ ライオンへ

170224

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我が合唱団の指導者のお一人、猪村浩之登場とあって、合唱団からは大挙16名が聞きに行った。愚亭が前回ここへきたのは、数年前、テノールの村上敏明とソプラノ菊池美奈がドゥオコンサートをやった時以来。

今日の演目は、

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ヴェテラン歌手4人に加えて、今日はピアニストが二人という、豪華な布陣。それゆえ、演目にグッと幅ができて、ご覧のような、見るからにそそられるプログラムに。

中でも、期待に違わぬ見事な重唱は、ヴェルディドン・カルロ」からの我らの胸に友情を」これは、いつ聞いても、何度聞いてもしびれる。今日の二人も、大変バランスが取れた響きだった。

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愛の妙薬」から。ちゃんと字幕まで用意されている。ここで字幕付きは初めてだ。

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こちらはメッゾの杣友恵子と「カヴァッレリーア・ルスティカーナ」からの二重唱。いやぁ〜、お二人ともビンビン出てますねぇ、声!

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狭い舞台で、衣装にも工夫を凝らし、熱演を続ける出演者たち。ほとばしる情熱が伝わり、感動そのもの。

#8

オペラ界の新星☆期待のバリトン歌手 加耒 徹が贈る『春』『恋』『愛』@アプリコ小ホール

170223 午前11時と午後2時の2回に亘ってのリサイタル。演目が異なるので、2度とも切符を買っている人が多かったようだ。予想されたことだが、9割が女性客。今、最も旬なバリトン歌手で、小顔、長身、イケメン、おまけに歌が上手いとくれば、まあこういうファン層になるのは必然。11時の回のメニューは以下の通り。

本人も冒頭の挨拶で認めていたように、ほとんど知られてない曲で、日頃から究めたいと思っている歌曲中心の構成にしたと。ついでながら、この方、トークがまたお上手だ。余計なことは一切言わないのだが、笑わせもするし、きちんと話せるという、まあこの若さでは、大したもの。昔、作曲家の黛敏郎が「題名のない音楽会」の司会をしていたあの端正なスタイルを思い出した。

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2014年、シャネル・ピグマリオン・デイズに1年間出演した時に何度か聞いているが、やはり当時と比べれば格段に上手くなっている。それは昨秋の「ナクソス島のアリアードネ」出演時でも実感していたが、今日、改めてじっくり聞いて、その感を深くした。

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この細さでよくこうした重厚な音色が出せるものと、感嘆しきりである。特に、最後の2曲は、まさにトリハダものだった。アンコールには一転、「初恋」を切々と歌い、おばちゃん、おばあちゃんたちは、こりゃたまらんワ!という表情。

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2種類のCD即売とサイン会にはおば(あ)ちゃまたちの長い列。しかも、なんと完売してしまった。最後尾の客は、売り切れ寸前で、不安の表情。(結局買えない人には、後日郵送するということに)

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サインをCDにしてもらって、うっとり顔のファンたち。即売会はよく見かけるが、完売というのはあまり聞いたことがない。

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CDも買わず、サインもねだらず、ツーショットだけ。

#7

「スノーデン」

170221 原題:SNOWDEN 米 135分 脚本・監督:オリヴァー・ストーン

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愛国者か反逆者か、世界を震撼させた国家機密漏洩の引き金を引いたスノーデン。その並外れたIT技術を駆使してCIAに採用され、さらにNSAで頭角を現していくが、同時に世界中の一般市民までもをターゲットに盗聴している驚愕の実態を知り、次第に心が蝕まれ、ついには国家機密をたった一枚のマイクロSDにコピーして、香港経由、モスクワに逃れる。

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⬆︎いつも持ち歩いているルービックキューブにマイクロSDをはめ込んで厳重な監視をくぐり抜けるスノーデン。

繊細で、内気のスノーデンが、命を賭けてまで、驚きの行動に出るに至った心の軌跡を

相変わらず切れ味の鋭い独特の手法で描いて見せたオリヴァー・ストーンは、やはり並みの監督ではなかった。

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⬆︎撮影風景。主演の二人、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、シェイリーン・ウッドリーと監督。

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⬆︎スノーデン本人とストーン監督。

終幕、ある集会場で、移動型ロボットの頭の部分のモニターに映るスノーデンが、リモート対談でインタビューアーの質問に丁寧に答えるシーン。するといつの間にか、レヴィットからスノーデン自身に映像が切り替わっている。雰囲気的にレヴィットとスノーデンがすごく近いので、この切り替えに、まったく違和感がない。

#9 画像はIMdbから。

星 由佳子を聴きに

170220 昨年末、とんだハプニングのあった杉並公会堂の第九で共演(?)したメゾソプラノ星 由佳子が新橋のアルテリーベでデビューするというので、本降りの中、出かけた。

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何しろこの美貌と170cmを超える日本人離れした体型だから、人気が出ないはずがない。この日も、六時半頃に会場に着いたら、すでに満席状態。

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プログラムには、オペラ・アリア、シャンソン、ミュージカル、日本歌曲と実に多彩に並べてあり、この演目選定・組立には苦労の跡が窺える。アンコールにはカルメンからセギディリアを。

ソプラノに比べると、メゾ向きの演目が限られるので、一般的にはやや馴染みの薄いものも入れざるを得ないところが厳しい。客層にもよるだろうが、やはりある程度はポピュラーなものを持ってこないと、飽きられてしまいがち。今回、幸いにも一番後ろの正面向きのテーブルだったので、客の反応がつぶさに観察できて、大変興味深かった。

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荒削りながら、例えばファヴォリータからの「おお、私のフェルナンド」などは、低音域から高音域までのふり幅が半端でない中、どの音域もとてもよく響いていたと思う。伸び代が豊かだから、今後、どこまで成長していくか、大いに楽しみな逸材。

11月にはこんなリサイタルを予定されている。

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#6 (文中敬称略)

「家族の肖像」

170220 原題:GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO 伊仏合作 121分 名匠ルキーノヴィスコンティの最晩年作。ヴィスコンティのきらびやかな作品群の中では、やや目立たない小品的な作品。1974年の作品だが、日本公開は1978年。なぜかリアルタイムでは見ていない。今回ニュープリントで岩波ホールで公開されたのを機に見に行った。

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ローマの高級住宅に住む、今は引退した教授(バート・ランカスター)のところに、ある家族が部屋を貸して欲しいと、半ば強引に移ってくる。これがまた一風変わった家族で、一見して気位の高そうな伯爵夫人というビアンカシルヴァーナ・マンガノ)、その愛人のコンラッドヘルムート・バーガー)、ビアンカの娘と、その婚約者という組み合わせ。

名画に囲まれた豪壮な書斎で、一人静かに読書したりして、余生を過ごすつもりだったので、貸すつもりまったくないと、にべもなく断るのだが、教授の目には、このトンデモ家族が徐々に新鮮に見え始めくるというから、世の中、分からない。

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コンラッドという青年もなにやらワケありで、最初のうちは教授をまったく受け付けないのだが、ある事件をきっかけに'68年の学生の騒乱にも関与した社会活動家らしいことを漏らしたりしたことで、教授との距離が縮まる。

いうなれば、古色蒼然とした因習の塊の世界に、突如モダンな考え方の群れが闖入し、やがてこの本来対立すべき対象が融合していく世界を、ヴィスコンティが、時に官能的なカットを挿入しながら、妖しく描き出したというわけだ。

ランカスターとバーガー(オーストリア人)以外はイタリア人というのに、全編英語だったのが気に入らない。これはイタリア語版で見ないとだめだろう。女中までペラペラ英語を喋られては、興ざめも甚だしい。

それにしても、この時代のヘルムート・バーガー(1944生)の美貌ぶりはどうだろう。アラン・ドロン(1935生)と、当時、美男ぶりを二分していたと思う。ただ、多作だったドロンに比べ、ドロン同様に可愛ってくれたヴィスコンティの作品のみに出演が限られていたバーガーは、日本でもやがて忘れ去れる運命だった。二人ともなお健在だが、今の姿は見たくないね。

シルヴァーナ・マンガノ(マンガーノは誤り。マにアクセント)も、「苦い米」(1948)がデビュー作で、製作者のディーノ・デ・ラウレンティスと結婚したが、ヴィスコンティパゾリーニに可愛がられたおかげで、結構いい作品に出演している。いい監督との出会いがどれほど俳優にとって大事なことか。黒沢に見出された三船敏郎もその好例だろう。

#9 画像はALLCINEMA on lineから。この時代の作品となると、ほとんどいい写真が残されていないのが残念!