ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

国際芸術連盟音楽賞受賞コンサート@伝承ホール(渋谷)

170718

f:id:grappatei:20170719095028j:plain

この音楽団体、昨年末の第九の合唱団で杉並公会堂の舞台に立った時の後援団体であることを思い出した。(主催は指揮者自身)そこの音楽賞を受賞されたお二人の記念コンサート。

f:id:grappatei:20170719102406j:plain

ピアニストの栗原ひろみは初めて聴かせていただいたが、華奢なお姿からは想像がつかないようなダイナミックな響きが身上なのか、スケールの大きな演奏を披露された。

声楽家星 由佳子は、すでにここに何度か登場しているので、改めての紹介は不要だろうが、今回もそれぞれジャンルの異なる楽曲に挑戦、すでにどれも自分のものにしているであろう、確固たる自信が伺えた。

前にも書いたが、どのようなプログラム構成にするか、演奏会には実に悩ましいところだろう。主催者側の希望もあるだろうし、自分の意に沿わない構成は回避したい、かと言って、自分の歌いたい曲オンパレードでは、聞く側はどうなるんだろう、etc. 

多くの聴衆にとって馴染みの楽曲は少数だったが、結果は、大変意欲的な構成になったと思う。常に偏らず、今回もスペイン、日本、ドイツ、ロシアという、まことにチャレンジングな内容で、太く、低く響く超低音から、ソプラノばりの輝かしい高音まで、存分に響かせ、大喝采を浴びた。

前半は、黒基調のシックなドレス、一転、後半は自らどこかで探したらしい和服風のコスチュームで、色合いも今の季節にふさわしいアクアマリーン基調のもので、これが伝承館という和風の舞台によく映えていた。

f:id:grappatei:20170719101341j:plain

フォアイエにある千住 博の大作の前で。滝の背景に涼しげな衣装がよく映っている。

#32 (文中敬称略)

 

 

海の日のチャリティーコンサート、合唱団員として参加の顛末記

170717

f:id:grappatei:20170419112308j:plain

4月から15回の練習を経て、とうとう当日になった。合唱団の集合時間は1145分。ちなみに開演時間は19時。予定より早めに会場着。男性は奏楽堂の楽屋の一室をあてがわれるが、女性は数が圧倒的に多いこともあり、別棟の第6ホールが控え室になる。

 

昨年同様、控え室に入るなり、そそくさと着替え、ボウタイまで締めてしまう人がほとんどで、かく言う愚亭も手早く着替えてしまった。ギリギリまでラフな格好で過ごす者もいるが少数派。(女性は全員、集合時には着替えていた)

 

12時半頃、舞台へ出て、並びと「入り」「ハケ」の練習。なぜか、去年ほどスムーズに運ばないので、イライラする団員、少なからず。愚亭は前から4列目の中程に。うまい具合に互い違いに顔が見えるような配置になっている。指揮者が見えないというのは、致命的だから、当然の配慮だが。

 

その後、独唱者のゲネが始まり、合唱団員も希望者は2階バルコニー席で、その一部を聞くことができるが、今年は、早めに戻れとの安全策(?)で、前半では、許昌(シュウチャン)の歌うドニゼッティの「連帯の娘」の有名なアリア「友よ、今日は楽しい日」(ハイC9連発でも驚くがこの人は、最後、ハイDまで上げたからねぇ)の途中から、高橋絵理の「チャルダッシュ」までのたった3曲!

 

その後、自分たち合唱のゲネだ。ソリストたちと声合わせは昨日すませているが、やはり緊張する。ソリストを後ろから聞くことになるので、声量としては、半分ぐらいになるのは仕方ないとして、それでもソプラノとバスの響きは格別だった。

 

舞台裏に戻り、指導の先生方から細かいダメ出しがあり、一旦、解散。ゲネを聞きたい人は再び2階席へ。後半は、甲斐栄次郎の「闘牛士の歌」から、手嶋真佐子の「ドン・カルロス」の一番のアリア、「おお不幸な賜りもの」までの5曲まで聞くことができて、まずまず満足。とりわけ直野 資(たすく)の「祖国の敵」(アンドレア・シェニエ)を聴くことができたのは、最近、さほど歌う機会が減っている大御所だけにラッキーだった。

 

その後、一旦解散なので、合唱団控え室に戻り、早めのお弁当をいただく。月村謹製のお弁当は、悪くない。食後は、1時間ほど手持ち無沙汰となる。そこで、控え室と控え室の間にある、モニターやソファの置いてあるロビーでくつろいでいると、旧知のソリストたちが出入りするので、ついおしゃべりすることに。何と言っても、このひと時は断然楽しい。

 

尤も、事務局からはソリストには声がけするな、写真は撮るな、と事前に厳しい注文が出されている。撮影はともかくとして、目が合えば、挨拶もするし、これは仕方ない。大目に見てもらうしかない。

 

開演時間1時間前になると、第6ホールへ移動して、最後のダメ出しをされての声出し。どこに座っても構わないというから、敢えてソプラノとソプラノの間に座ったのだが、さあ大変。特に右側はトラさんだから、ひときわ大きな声で、自分を見失うほどだったが、良い経験になった。

 

さて、いよいよ出番となる。歌い始めてみれば、練習におよそ40時間以上もかけたのに、30分はアッという間で、呆気ないこと!家族が録音しておいてくれた演奏を聞くと、ほぼ期待以上の出来栄えで、一安心。

f:id:grappatei:20170718225700j:plain

 モツレク、終演。⬆︎⬇︎FACEBOOKから拝借した画像です。

f:id:grappatei:20170718225721j:plain

ただ、ラクリモサの最後、アーメンはなぜもっとフォルテにしなかったのか、あそこが一つの聞きどころなのにとの指摘も。そう言えば、打ち上げに参加した歌仲間でリーダー格の人物からも同じ指摘を受けていた。念のためにYouTubeでいくつかの演奏を聴くと、確かにフォルテで終わる例がほとんど。その点については、練習を通じて、特に指導者からは何の説明を受けなかった。こちらから質問すべきだったのかも知れないが、後の祭りだ。

f:id:grappatei:20170718140406j:plain

モツレクソリストを便乗撮り。左から小野和彦(バス)、鎌田雅子(メゾ・ソプラノ)、大久保陽子(ソプラノ)、布施雅也(テノール

そして、第3部が終わり、アンコールのナブッコからの「行け、我が思いよ、金色の翼に乗って」を歌いに、再び舞台へ。我々の前にはすでに独唱したソリスト全員が勢ぞろい。これだけの人気プロ歌手たちと同じ舞台に乗って演奏できるのは、滅多にないこと、その喜びを胸に秘め、合唱団員は暗譜で、(ソリストたちは一応譜持ちで)大合唱の締めくくりとなった。

f:id:grappatei:20170718140945j:plain

終演後、指導の荒牧小百合先生、竹内雅拳先生から講評を聞く。「来年はさらに上手くなりましょう」と結んだ。

f:id:grappatei:20170718225809j:plain

(⬆︎Va pensieroを全員で。⬇︎ソリスト陣勢揃い、どちらも日声協の写真をお借りしています)

f:id:grappatei:20170718225851j:plain

当初出演予定だった人気ソプラノ歌手、小林沙羅が体調不良か、突然出演できなくなり、そのぶん、いくらか終演時間が早まった。おかげで打ち上げを少しだけ早く始められたが、それでもも9時半は回っていたから、盛り上がっているうちにラストオーダーになり、集合写真を撮る間もなく、「終電、終電!」と叫んでみんな駅方向へ散っていった。愚亭も深夜0時半の帰宅になった。不思議に疲れても酔ってもいない。むしろ独特の空虚感だけが残った。

(文中敬称略)

 

西洋美術館の前庭での彫刻鑑賞後、赤羽のまるます家へ。

170713 恒例の赤羽「まるます家」での暑気払いまで少しだけ時間があったので、高齢者が無料で入館できる常設館を覗こうとしたが、途中でそれほどの時間がないと判断、前庭に展示されているロダン、ブルデル(弟子)の作品群の鑑賞にとどめた。

置いてあるのは、入口から右側に「地獄の門」、「アダム」、「イブ」、そして「弓を引くヘラクレス」(これだけブルデルの作品)、左側に「カレーの市民」と「考える人」の、全部で6点。

f:id:grappatei:20170714160343j:plain

細部はもっと近くか、双眼鏡でも用意しないとよく見えない。

f:id:grappatei:20170714160443j:plain

このねじれたアダムの顔の表情は、システィーナ礼拝堂の天井画中央にあるアダムにそっくりなのだが、果たしてロダンミケランジェロを意識していたのだろうか。していただろうね。

f:id:grappatei:20170714160605j:plain

こちらは恥じらうイブ。

結局、京浜東北線に遅れが出て、ゆうゆう間に合うはずだった会合に定刻5時ぴったり到着。

いつものように、ナマズ唐揚げ、⬇︎鯉の洗い、ほや、特製メンチカツ、などなど次々にオーダー、最後は恒例のうな重で締め。5時から2時間ちょっと。

f:id:grappatei:20100424192602j:plain

最初の生ビールの後に飲んだのは、5人がそれぞれ別のものをオーダー。ちなみに愚亭は白ワイン、赤ワイン、最後はモヒート。ワインは機内で供されると同じような250ml入りの洒落たボトルで、しかもちゃんとしたイタリアの銘柄品。トレッビアーノとサン・ジョヴェーゼ。それで、@¥4,000だから、堪えられないのだ。

「歓びのトスカーナ」

170713 原題:LA PAZZA GIOIA (大喜び)伊仏合作 監督:パオロ・ヴィルツ

f:id:grappatei:20170714143301j:plain

主演のヴァレーリア・ブルーニ・テデスキの上手さが断然光る作品!相手役の、監督の女房でもあるカエラ・ラマッツォッティも見事な演技だった。テデスキさんは、例の元仏大統領夫人、カルラ・ブルーの異父姉。まったく似ていない。もちろん妹の方が断然きれいだ。

この手の作品はイタリアでは、珍しいだろう。1991年に公開された米映画、「テルマ&ルイーズ」(スーザン・サランドン、ジーナ・デイビス)を彷彿とさせる典型的なロードムーヴィーである。

f:id:grappatei:20170714145145j:plain

トスカーナにある療養施設、社会復帰を目指す弱者達が収容されている。ここで出会った、性格も育ちも何もかもまったく異なるベアトリーチェ(テデスキ)とドナテッラ(ラマッツォッティ)。

ベアトリーチェは、元伯爵夫人と言いふらし、虚言癖で口がよく回り、一見社交的な女、一方のドナテッラは、身体中にタトゥーを入れており、虚ろな表情でほとんど口を開かず、何を考えているか分からない、見るからに陰気な女。

見事なほど対照的な二人が互いに惹かれあったり、嫌悪したりしながらトスカーナ州内を転々と移動しつつ、互いの辛い過去を知るにつれ、ますます離れがたい仲に。

f:id:grappatei:20170714145902j:plain

結局は、元の施設に二人とも戻ることになり、一応ハッピー・エンディングにしてあるが、周囲を巻き込み、大迷惑をかけながらも、計り知れない犠牲を二人とも払ったことにある種、諦観だけでなく、ちょっとだけ明るい未来を感じさせる幕切れ。後から施設に戻ったドナテッラに、2階の窓から控え目に手を振るベアトリーチェの、どこか物悲しい目が問わず語りに。

f:id:grappatei:20170714145918j:plain

エンディングに字幕で紹介されたのは、1978年、イタリアでは精神病院を廃止したと。

世界で初めて精神病院をなくした国、イタリアでは、バザリア法の制定によって、次々に精神病院が閉鎖された。『自由こそ治療だ!』という画期的な考え方から、それまで病院に閉じ込められ、人としての扱いを受けていなかった患者たちを、一般社会で生活させるため、地域にもどしたのだ。本作は、そんな時代背景を基に作られた。

#47 (画像はIMDbから)

「レオナルド ✖️ミケランジェロ展」@三菱一号館美術館(ブロガー内覧会へ)

170711 今日はブロガー対象の内覧会に招待され、三菱一号館美術館へ。午後6時から受付開始なので、しばらく近くでスタンバイ。

f:id:grappatei:20170712161621j:plain

手前の植物が絡まるタワーからミストが吹き出てきて、気持ちが良い。

f:id:grappatei:20170712153153p:plain

ルネサンス期、無数の偉大な芸術家が登場したが、中でも聳え立つ2大天才は、間違いなくこの二人だろう。今度の企画展は、この二人だけにスポットを当てるという、大英断!と言っても、彼らの著名な作品がずらりと並ぶというわけではなく、彼らの作品はどれもほぼ門外不出揃いだから、そもそもそれは無理な相談。

ということで、素描や手稿が中心になったのはやむを得ぬところ。それでも、それでもだ、《十字架を持つ(ジュスティニアーニのキリスト)》が間近に見られたのは、なんという僥倖だろう。しかも、この日から公開というから、実にラッキーであった。

f:id:grappatei:20170712161807j:plain

いつもは大きめの作品が並ぶこの一角だが、今日は割にこざっぱりした風情だ。

f:id:grappatei:20170712161943j:plain

6時半からレクチャー開始。今日の担当学芸員は若手の岩瀬 慧(けん)さん。手前はお馴染みのナビゲーター、Takさん。奥は高橋館長。舞台裏の話など含め、貴重なお話を伺うことができた。

そしていよいよ超目玉、「十字架を持つキリスト」を見に、ぞろぞろ全員で1階へ降りる。そして・・・まずは見ていただこう。

f:id:grappatei:20170712162838j:plain

f:id:grappatei:20170712163026j:plain

f:id:grappatei:20170712163100j:plain

f:id:grappatei:20170712163136j:plain

f:id:grappatei:20170712163223j:plain

f:id:grappatei:20170712163405j:plain

f:id:grappatei:20170712163438j:plain

f:id:grappatei:20170712163506j:plain

f:id:grappatei:20170712165105j:plain

f:id:grappatei:20170712165140j:plain

上の説明にあるローマにある像とは、市内のサンタ・マリア・ソプラ・ミネルヴァ教会にあるこの像。

f:id:grappatei:20170712165704j:plain

十字架を入れれば2m50, キリスト像だけでも2mを少し超える大作。制作年代は1514-1516と、40歳前後ということになる。これだけの作品だが、上の顔のクローズアップにも明らかなように掘り進んでいる最中に、白の大理石に黒い筋が現れたため、その後の制作を放棄したそうだ。後世、別の彫刻家が鑿を打ったようだが、それが誰かは不明。あのジャン=ロレンツォ・ベルニーニとする説もあるそうだ。どこまでがミケランジェロ本人の鑿で、どこからが別人のものかは推定するしかないそうだが、捕縛縄を持つ右手部分は明らかに別人のものとされている。なにやら、途中から弟子が作曲を続けたモーツァルトのレクイエムの話のようで、実に興味深い。

ローマ近郊、ヴィテルボ県のバッサーノ・ロマーノという村の修道院、Monastero San Vincenzoにあったために、世紀の大発見は1997年と、つい最近のこと。

ともあれ、数奇な運命を辿ったこの一点を見るためだけでも、遠くからここへ来る価値は十分あると思う。

さて、書きながらも興奮冷めやらぬが、他の展示にも少し触れておこう。

f:id:grappatei:20170712165925j:plain

f:id:grappatei:20170712170101j:plain

ウッフィーツィ所蔵のこの有名な作品の模写だが、作者は不明だが、明らかにレオナルドが生きている時代に、この作品(ルーブル所蔵)を直接見ながら描いた模写とされている。聖アンナはよく似ているが、聖母の顔はちょっと違うかなぁーという感じだ。

f:id:grappatei:20170712170714j:plain

f:id:grappatei:20170712171245j:plain

f:id:grappatei:20170712171618j:plain

これは、作者不詳ながら、素晴らしい作品である。レオナルドがなんらかの形で絡んでいたとされるほどだから、専門家でもレオナルド自身の作品と判定しかねない。

なお、掲載した写真は、主催者から特別な許可をいただいて、撮影したものです。

本展覧会は9月24日まで。月曜休館。当日券は一般が1700円。芸術愛好家、必見!!!