ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ライン・オブ・デューティ 汚職捜査班」@Netflix

201019 原題:LINE OF DUTY(職務)英国 シーズン1〜5が2012から2019までBBCで放映された。シーズン6は今後放映される見込み。シーズン5の最終回エピソード6で、一応の決着を付けているものの、続きがある含みを持たせている。全部で29話、それぞれ約1時間。

f:id:grappatei:20201020120723j:plain

この3人がメイン・キャスト

警察の中での内部捜査班、いわゆる汚職警察をあぶり出す監察官で編成するAC-12(ACとはAnti-Corruption Unitのこと)の活躍を描く。

いくつか実話をベースにしているらしいが、いわば身内の行動を監視して、すこしでも怪しいと感じると徹底的に身辺を洗い、それが警察のトップだろうと、ゆるぎない姿勢で行動する、冷徹にして繊細、勇猛果敢な一群である。

f:id:grappatei:20201020132438p:plain

左がマーティン・コムストン。たまたま右側の潜伏捜査中の元同僚警察官役の俳優も小さいから目立たないが、おそらく170cmを切るぐらいの感じだ。

実働部隊はスティーブ・アーノット(マーティン・コムストン、前歴はプロサッカー選手だとか。背が低いのが玉に瑕。後半は髭面)、ケイト・フレミングヴィッキー・マクルア、ちょっとホラン千秋似で、まあ美形であり、体幹がややごつい)、そして彼らを指揮するのが警視正、テッド・ヘイスティング(エイドリアン・ダンバーダニー・ケイリチャード・ギアを足して2で割ったような)。この3人がすべての回に登場する。

女だてらに(などと言おうものなら、我が家では大バッシングにさらされるが)このケイトの活躍ぶりが凄まじい。その功績が認められ、終盤には昇格して、スティーヴの上司になる。この世界では、まあ当然だろうが、上司・上官にはサー、マムを必ず言わねばならず、スティーヴも周囲に人がいなければこれまで通り、ケイトと言うが、そうでなければ、ボス、マムをつけている。

ティーヴにしてみれば、身から出たサビ、というか、そもそも第1話で、聞き込み情報を基に犯人が潜む家に踏み込み、別人を射殺するという大失態を演じたという伏線があるから、仕方ない、というよりよく彼に復活のチャンスを与えた側に見る目があったということだろう。

AC-12の一員でありながら、目星をつけた警察官所属の部署に入り込む場面がしばしば登場するが、同じ警察官同士、すぐにバレると思うのだが。まして女性ならなおのことで、その辺りはややリアリティに欠ける。

ともあれ、ケイトもスティーヴも、上司のヘイスティングも、ほぼ私生活は犠牲にしているから、呆れる。こんな職業、よくやっているものである。他の部署からチクリ屋のように見られ、蛇蝎の如く嫌われ恐れられ、いつも疑心暗鬼で精神状態を保ち続けるのは常人には無理だ。

世界の警察組織には大なり小なりこうした組織を内部に抱えている。日本も例外でなく、人事1課というらしいが、”ひといち”と内部では言われる課であるあらしい。

シーズン5まで、どれをとっても実に緻密に構成された脚本であり、演技もみな優れていて、冒頭からぐいぐい引き込まれ、こんなに面白いドラマがあることにも驚くほどの切れ味。海外ドラマでは最高傑作と言える作品。見終わって、完全にLOD・ロスである。これを凌ぐ作品でに出会えるか、ちょっと不安。

吹き替えでなく字幕で見てるから英語の勉強になる。方言がいろいろ出てきて面白い。アイリッシュスコティッシュなど、結構、きつい訛りが多出する。ロンドンでも出身階級により、用語がかなり異なるし、その辺も楽しめる。

それにしても、日本人と違って、アルコール分解酵素が潤沢に出る連中だから、まあ男も女も強い酒をよく飲むこと!日本なら酔っ払って仕事にならないだろうに。

それと終盤に出てくるが、囮捜査というのか、犯罪組織に入り込んで、長期間一味になりすます捜査官は、万一バレれば非業の最期となるわけで、よくこういう役を引き受ける警察官がいるものだ。

間違いなくイチオシ!でも、かなりエグいシーンが出てくるから、女性には不向きかも。

インフルエンザ予防接種、済ませました。

201014  聞くところによれば、効き目は3ヶ月ほどらしいから、あまり早く打つのもどうかと思ったが、65歳以上の高齢者は、今月26日までに済ませるよう、その後は医療従事者、65歳以下で既往症のある人、子供、その他、接種を希望する人に対し順次というようなことが区の案内にあるので、早めにすますべしと判断した次第。

f:id:grappatei:20201016153248p:plain

昨年同様、普段かかっている近くのクリニックへ行き、接種。これがまったく痛みを感じさせない熟練の看護婦さんのおかげで、それこそアッという間だった。今は注射器の針が相当細くなっていることは知っているが、それにしても自分のような痛がりやにはありがたい。子供時代のBCGの痛さを知っている世代だけにね。

去年は終日、なんとなく痒みが出た記憶があるが、今回は副作用らしきものは一切なし。ただ、いつものように夕食どきに白ワインをグラス(250ml)1杯飲んだだけだが、いつもより酔いが回ったな、という程度で、シャワーも普通に浴びたし、問題なかった。

そういえば、何年か前にペルーに行った折り、例の世界一高いところにある淡水湖という触れ込みのチチカカ湖畔に1泊した際、現地ガイドから夜はno alcohol, no showerと念押しされたのに、どちらも禁を破って、no trouble.

「ザ・ルースレス〜とあるマフィアの転落人生〜」@Netflix

201006

f:id:grappatei:20201006131312j:plain

Lo Spietatoとはpietà(哀れみ)がない、つまり無慈悲、情け容赦のないというイタリア語。

ネットフリックスにしてはむしろ珍しい1話もの。111分。監督:レナート・デ・マリーア 主演は、「昼下がり、ローマの恋」に続いてリッカルド・スカマルチョ!今、イタリア映画界きっての旬な男優の一人であることは間違いない。いわゆる美男俳優ではなく、ひょうきんながらも、ちょっとクセがあり、影のあるスターという立ち位置だろう。

冒頭は、ミラノの大聖堂を間近に、しかも水平に見る豪邸のテラスで、なにやらえらそうに新聞に目を通すガウン姿の主人公。大聖堂トップ、金色に輝くマリア像に朝日が反射して、にんまりするサント(聖人とは、笑わせる名前、もちろん俗称だが)。

実は、サントはカラッブリア(長靴の土踏まず辺り)の寒村、プラティ(Platì)出身で、夜行列車に揺られ、羊飼からレンガ職人になったわけあり父親と家族ともども夜逃げ同然でミラノへ上京。ここら辺は、まるでアラン・ドロン主演の「若者のすべて」を彷彿とさせる滑り出し。

やがて悪事に手を出し、この男、本領を発揮、まあある種の才能の開花なんだろう、あっという間に闇の世界でのし上がっていく。ワルガキ丸出しで、金儲け、恐喝、殺人、女好きというわけで、純真だったロッコアラン・ドロン)とは、そこからは大違い。

f:id:grappatei:20201006134024j:plain

マリアンジェラ(サラ・セラヨッコ)と結婚するハメに。そこに警察に踏み込まれ、このザマ。

途中から登場するフランス人アナベルマリー=アンジュ・カスタ)と浮気するが、高級レストランで、彼女がワインを選定することになり、Ça va sans dire(言わずもがなだけど)とソムリエに。んで、サントにソムリエが、「それで、どれになさいます?」と。

彼女がてっきり自分の知らない高級ワインの銘柄を告げたと思い込んでるから、ややむっとして、ソムリエに「?!」。重ねて聞かれ、彼女が助け舟。「バローロ、72年!」。笑える一場面。

無学というより、単にフランス語を知らなかっただけなのだが、以来、ナントカの一つ覚えで、何かというと、サ・ヴァ・サンディールと言って、敵も味方も煙に巻く、ちょっとチャーミングなサントの姿が印象的。

邦題に「〜・・・転落人生〜」とあるものの、最後はそれほどの転落でもない。ちゃっかりと自分のいた組織を一網打尽にさせる引き換えに司法取引で自由をかちとるわけだから。それにししてもこの邦題はひどすぎる。

f:id:grappatei:20201006134149j:plain

マフィアの嫁になるだけあって、このサラ、肝っ玉が座っていて、予想外の凄みを見せる。

正確にはマフィアはシチリアが本拠地だから、カラッブリアではマフィアとは呼ばない。ンドランゲタという、キテレツな呼び名がある。ちなみにナポリが根城の組織はカモッラである。サントが生まれたプラティは人口がどんどん減って、今や3,500人ぐらい。産業らしきものはなにもなし。いわゆる限界集落になるのは時間の問題だろう。

マフィアにしても、カモッラにしても、この訳のわからない名前の組織にしろ、いずれも山奥の寒村が出身舞台となっている共通点が面白い。そう言えば、「ゴッドファーザー」もシチリアのコルレオーネ村という、かろうじて地図に名前が見えるような村だった。

画像はIMDbから。

「昼下がり、ローマの恋」@Netflix

201006 2011年(日本は翌年)公開のイタリア映画。気取った邦題だが、原題は下にもあるが、MANUALE D'AMORE3(恋愛マニュアル3)で、連作の3番目ということ。今から9年前の作品ゆえ、デニーロもベルッチもまだ若い!

f:id:grappatei:20201006114919j:plain

f:id:grappatei:20160111193503j:plain

世間の評判はイマイチだが、愚亭には十分楽しめた。いわゆるオムニバス形式で、青春編、中年編、熟年編というわけだ。いずれも舞台がローマ(尤も、スカマルチョが活躍する第1話では前半途中からローマではなく、出張先となる中部イタリア、グロッセート県のCastiglione della Pescaiaという漁村が舞台)

いかにもイタリア的で、3話とも結構笑えたけど、やはりデニーロとベルッチという大物二人が出た第3話が一番よかったかな。ローマの街並みや人々の暮らしぶりが楽しめたのも収穫。デニーロは言わずと知れたイタリア系。本作では旧友を訪ねるためにローマに来たイタリア系アメリカ人という役だから、彼の米語訛りのイタリア語はまさにぴったり。一方、モニカ・ベルッチペルージャ(わが青春の)出身の56歳だが、撮影時は46歳だから、まだまだその妖艶さは真っ盛り。

f:id:grappatei:20201006125036j:plain

豪華ツーショット!

相変わらず映画館に行けない愚亭だから、ネットフリックスで、「イタリア映画」と検索するとヒットしたのが十数本。見る価値のありそうなのが3割程度なのがチト残念。本作はその一つ。

 

「クリミナル:英仏独西編」@Netflix

201004

f:id:grappatei:20201006105713j:plain

これはイギリス編

この作品の面白さは脚本の素晴らしさに尽きる。まったく同じ尋問室が使われるが、イギリス、フランス、ドイツ、スペイン、4カ国の警察が容疑者を取り調べる、ただそれだけ。他の映像は一切なし。

取り調べのやりとり、それをマジックミラーの反対側で見て、いろいろ判断のやりとりをする捜査官の姿、休憩中、コーヒーを飲みながら一息入れる時の会話が時折入る程度。さぞ退屈するかと思いきや、さにあらず。それほど脚本の妙ということなのだろう。

各国4話ずつなので、手軽に見られるのもいい。オススメ!