ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ファースト・マン」@Amazon Prime

221229 FIRST MAN 米 2018 2h21m 監督:デイミアン・チャゼル(「ラ・ラ・ランド」2016)

2019年2月、封切り直後にリアルタイムで見ていたのですが、また見てしまいました。ま、この種の宇宙が舞台の作品が好きなものですから、つい・・・。

アメリカ映画らしく家族の絆を主眼にして描かれています。アポロ計画は1号から17号までで、ほとんど成功させていますが、1号では準備段階で火災によりガス・グリソム他2名の飛行士が生きながら焼け死ぬという悲惨な事故を起こしています。それでも、よく体勢を立て直して継続させたものと感心します。ある種、アメリカの強さでしょうか。

1961年、ガガーリンのヴォストーク1号に宇宙飛行を先んじられてしまったアメリカ、大いに誇りを傷つけられたわけで、威信を取り戻すことが国是のようになっていったのですね。とてつもない予算をかけるわけで、さすがに当初威勢のいいことを言っていたケネディーも、自信がぐらついたそうです。

ともあれ、スタートさせたアポロ計画の中で最も重要な、人間を月に降り立たせるというのが、この11号の使命でした。そして最初の月面男がニール・アームストロングライアン・ゴズリング)でした。That's a small step for (a) man, but a giant leap for mankind. この部分は映画の中でもアームストロング自身の肉声が使われていました。

飛行士の家族たちはいわゆる官舎をあてがわれていて、日頃から家族もまきこんで親しく付き合っていましから、仲間が事故死すると、とてつもない重圧がかかるわけで、次はウチの番かも、って思うわけです。特に夫人たちは気が気じゃないわけでしょう。もともと寡黙なニールに妻のジャネット(クレア・フォイ)が今更ながら大丈夫なんでしょうねと。と言われてもねぇ・・・。

そして、奇跡のミッションを果たして帰還した後、検疫で3週間も隔離されますが、その最中にジャネットがニールに会いに行き、透明なパネル越しにぎこちなげに見つめ合う二人、物言わねど、気持ちは通じています。やがて離婚することになるとは!

1969年7月16日、月面着陸の場面は、すばらしい迫真の映像もあって、感動的です。全世界に生中継されたので、その日のことはよおく覚えています。

冬至を過ぎてからも、日の出は遅くなる

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今朝、7時半頃、呑川沿いの散歩に出て、あまり正面からの陽光がまぶしく思わず後を振り返ったら、超足長の影が。遠景、樹々の間に見える塊は大規模修繕工事中の我がマンション。

今朝の日の出は6時50分でした。冬至(12/22)の日の出が6時47分だったので、冬至を過ぎてからも日の出は遅くなっていくのです。ですが、日の入りはさらに遅れるので、全体として日照時間はすでに長くなっています。毎度のことですが、冬至を過ぎるとなぜかホッとします。尤も寒さはこれからが本番ですが。

それにしても、太平洋側は真冬でも陽光に溢れ、雪下ろしもせず、停電もなく、ほんとに恵まれていることを日々実感します。言霊を思うと、あまりこういうことを書かない方がいいとは思いつつ・・・。

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」@109シネマズ川崎

221227 AVATAR: THE WAY OF WATER 2022 米 3h12m 監督のジェームズ・キャメロンは共同ですが原案・製作・脚本にも名を連ねています。すべてJ. キャメロンによる作品と言っていいでしょう。

まずは前作を見たのが10年も前だったということです。偶然、同じ映画館でした。IMAXの大画面に3Dですから、それだけでもとてつもない映像の世界に溶け込んでしまうのに、さらに撮影技術の進化が相まって、究極の映像作品になっています。このすさまじさは、まさに筆舌に尽くしがたく、劇場、それもちゃんとしたところへ行って見るしかありません。

ストーリーは前作の続きで、サム・ワージントン扮するジェイク一家を中心に描かれますが、”森の住人”が地球人から狙われて一家あげて”海の住人”になっていく過程と、終盤の地球軍の総攻撃に耐え、海中の見たこともない大小の生き物を味方につけて、ついに生き延びるという展開で、ラストは結構ウルウル来ちゃいますね、愚亭でも。

それにしても、どの俳優がどの役を演じているのかがあの特殊メイクとモーション・キャプチャーによる映像作りでは分からないのがちょっと残念ですが、そこはあえてそのようにジェームス・キャメロンが作ったんだろうと想像されます。ケイト・ウィンスレットがどの役だったか、最後まで分からずじまいでした。

後で分かったのですが、これがケイトさんが演じたロナルと言う役

キャメロンにとっては「タイタニック」でヒロインを演じさせた女優だけに、特別な思い入れがあったのかも。また、海中のシーンや、特に、最後に地球軍の最新の超大型軍用機が横転、沈没していく場面は「タイタニック」を思わせるに十分でした。

シガニー・ウィーヴァーが登場したのもちょっとした驚きでした。

これがシガニーさんと言われても、ちょっとねぇ〜

 

「アウトポスト」@Amazon Prime Video

221226 The Outpost (前哨基地)米 2019 2h3m 監督:ロッド・ルーリー 製作に6人、製作総指揮に実に10人が名を連ねています。どんだけの作品かと言うことでしょう。出演者では、クリント・イーストウッドの息子、スコット・イーストウッドオーランド・ブルーム(前半で姿を消してしまうのがもったいない!)以外は知らない名前です。

これまで随分戦争映画を見てきましたが、戦闘シーンの苛烈さにおいては、本作はトップクラスだと思います。いったいどうやって撮影したのか不可解なほどの迫真の撮影でした。

もちろん手持ちカメラを多用して臨場感を出したのは間違いないのですが、それ以外にもいろいろ最新のテクニックを駆使したことでしょう。それに応えた俳優陣も立派だし、出演者の中にはこの無謀な作戦に実際参加した兵士も何人かいたようです。あの時に死に別れた仲間たちをそばで俳優が演じていて、妙な感じがしたと同時に懐かしくもあり嬉しい気持ちと、複雑な感情をエンドロールで語っていたのが印象的でした。

”カムデッシュの戦い”と呼ばれ、実際に起きたことです。2009年10月、舞台はアフガニスタンの山岳地帯、周囲を小高い山に囲まれた谷底のようなところに問題の前哨基地が設営されています。ちょうどすり鉢の底のような場所です。もともとは地元民との交流や情報把握に使用していたものを時代が変わり、基地に転用したらしいです。この地勢では、敵であるタリバンが押し寄せてきたら、持ち堪えるのはかなり難しいだろうというのは、素人の目にも明らかです。

前半は割と淡々と進行していき、正直眠くなりますが、後半は一気に激しい戦闘シーンへ突入。正視に耐えかねる場面も少なからず、女性には勧められない作品です。

通訳として米軍に雇われているモハメッドと称する現地人が自分が得た情報で、まもなくタリバンが大挙して攻めてくると上層部に報告します。が、空振り。こうしたことが数回起きて、誰も彼を信用しなくなります。これがまさにオオカミ少年的な展開で、誰も信用しなくなった時に、それが起きるのです。

圧倒的に劣勢に立たされ、さっそく援軍を要請しますが、しばらくは持ち堪えるしかありませんが、20~23歳ほどの若い兵士を何人も亡くすことになります。これは間違いなく責任問題に発展します。だって、誰が見ても危険極まりない陣地ですから、山上から本気で攻め立てられたら、近代装備の米軍といえども、持ち堪えられないことは一目瞭然です。300vs.53ですからね。

そして恐れていた事態となりますが、ぎりぎりでヘリや航空機が飛来して、敵を一掃、辛くも勝利(?)しますが、はっきりとこの作戦は大失敗。この前哨基地は閉鎖され、幕となります。

こういう作品を見るにつけ、虚しさだけが残ります。自国兵をほぼ犬死にさせ、挙げ句の果てに、この11年後、タリバンは政権についてしまうのですから。もはや、アメリカが”世界の警察”の看板を自ら下ろすのは当然の帰結でしょう。

「ハーフ・ア・チャンス」@Amazon Prime Video

221222 1 CHANCE SUR 2 (二人にチャンスは一回)1998 仏 1h44m 脚本(共)・監督:パトリス・ルコント  

完全なるB級作品。よくこんな映画を名手パトリス・ルコントが作ったものと呆れます。でも、2大スターの共演ですから、もちろんそれだけで見る価値があろうというものです。1998年製作なので、この時二ツ年上のジャン=ポール・ベルモンドは65歳、対するアラン・ドロン、63歳です。二人の共演は話題作「ボルサリーノ」以来、28年ぶりということになります。まだまだかっこういい二人ですが、アラン・ドロンはこの年齢でもさっそうとして、実に若々しくサマになっています。

愚亭は彼の日本でのデビュー作「お嬢さん、お手やわらかに」(1958)以来、日本公開作品はほぼ全部見ていると思います。中でも、愚亭の中では、ベスト1は常に「太陽がいっぱい」('60)なので、ベルモンド亡き後、少しでも長生きして欲しい永遠のスターです。早死にしてしまったジェームズ・ディーンと対照的です。

当時26歳のヴァネッサ・パラディ、大した女優ではないのに、こんな大スター二人と共演できたとは、なんという光栄でしょうか。演技も冴えないし、前歯に隙間が気になって仕方ありませんでした。

JP・ベルモンドは、やはりなんと言ってもジーン・セバーグとの「勝手にしやがれ」が一番印象に残っています。そりゃ、ジャン=リュック・ゴダール監督の最高傑作ですからね。

背中を撃たれながら、シャンゼリゼに向かって路地をよろめき、ついに倒れ込むラストシーン、目に焼き付いています。c’est vraiment dégueulasse.が最後の言葉ですが、「最低だ!」と。何が最低なのかというのが、ある種謎解きのように語られています。警官に「なんだって?」と聞いた彼女に、警官は「あんたはサイテー!」って言ったよ、となってますが、なぜ警官が事実を歪曲したか、これまた謎のままです。

失礼、話がだいぶそれました。