ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

彩の国さいたま芸術劇場デビュー

240507 今からちょうど200年前、ウィーンで第九の初演が行われたという記念すべきこの日に歌えるのは望外の幸せ。ウチの合唱団の合唱マスターが情報をくれたおかげで急遽参加した次第。

ちょっと見にくいチラシですが、日独楽友協会というところが主催した公演です。下の方に小さく書いてありますが、「指揮者講習会」に絡めた演奏会ということで、通常の演奏会とはかなり様相が異なりました。

まず練習ですが、あくまでも主体は指揮者講習会であり、第九合唱はいわば実験台のような立ち位置、というと主宰者には少々辛口コメントになりますが、それが偽らざる実態でしょう。

5月の3〜6の4日間の練習で私は2回参加しました。私が参加した初回はテノールが1人だけという、かなり偏りのある編成でしたが、さすがに前日は逆にテノールの方が多かったほどで、それなりに充実した内容になりました。

指揮者講習の受講生は4,5人いらして、入れ替わり立ち替わり振って、講師であるウィーン国立音大教授、シメオン・ピロンコフ氏と日独楽友協会主宰者である杉山直樹氏が指示を出すという形式で講習が行われました。

指揮者講習の現場。左側に見える講師から指導が入ります。

ゲネの風景。振っているのは本番指揮者になる韓国人女性です。

今回、とくに運営スタッフのような仕切り役を置いておらず、何から何まで杉山氏の指示で進行していきました。奇妙なことに演奏会の宣伝もあまりしておらず、客の入りはかなり限定的だろうと想像されましたが、それをあまり気に留めてないようでした。

そんな状況のまま公演日を迎えました。当日まで本番の指揮が誰なのか発表されませんでしたが、ゲネでは受講生の一人である若く小柄な女性がきびきびしたタクト捌きで振っていたので、この人が本番指揮者と思っていたら、果たしてそういうことでした。当日のプログラムにもありますが、韓国出身の指揮者です。

本番演奏中(3楽章)にこっそり撮影しちゃいました。🙏

 

これが杉山さんお手製のプログラムです。予算的判断からプログラム作成は省略したのでしょう。この辺り、いろいろ苦心の跡が窺えます。

外来講師、シメオン・ピロンコフ ウィーン国立音大教授 ブルガリア

主任講師、杉山直樹氏、本番ではブルックナーを振りました。

われわれ合唱団員は客席でブルックナーをそぉって聞いても構わないと許可が出たので、三々五々、客席に散って聞かせてもらいました。相変わらず金管がとくに目立つ曲でした。ブルックナーは生誕200年ということで、今日の最初の演目に。

さて、いよいよ10分休憩の後、第九です。指揮は韓国人の張叡恩(ジャン イェウン)さんで、今回の講習会で最優秀者に選出されました。ゲネでの振り方に、あきらかに他の受講生と違うオーラを感じました。

合唱団員は3楽章までは客席前方に座って、3楽章終了と同時に舞台に上がるという流れでした。それにしても、噂以上だったのは、3楽章の超超高速演奏でした。気の毒だったのはホルン首席で、例の4回連続のパッセージでは、音が”転がらず”、空転してしまいました。あの速さでは、よほどの名手でないと無理かと素人判断した次第。

舞台上では合唱団はオケの前、つまり舞台最前列に並び、4楽章の前半は下手の女声陣、上手の男声陣がそれぞれ横向きに左右からマエストロの方を向き、いつも合唱団が立ち上がるタイミングで、客席側に向きを変えます。

合唱団と同じ列で中央に位置するソリスト陣、つまりマエストロと背中合わせで、バスの大澤健さんが歌い始めます。ソリスト陣では、他の3人の方々は存じ上げませんでしたが、どなたも見事な歌いっぷりでした。モルト・ブラーヴィです。

懸念されていたことですが、案の定、客席は空席が目立ちました。これだけの演奏、しかも記念すべき日の演奏なのに、もうすこし営業してもよかったのにと残念な気持ちでした。歌い終わったのが9時半近く。まっさきに会場を飛び出しましたが、帰宅は11時半。冷えたシャルドネが待っていました。