ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

2年ぶりに第九を歌いました。しながわ第九@きゅりあん

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f:id:grappatei:20211226183225j:plainさすがに昨年はアマチュア合唱団での第九の団員募集はありませんでした。自分のことで恐縮ですが、2013年に初めてアプリコ第九で歌うことができて、それ以来、毎年第九の舞台には上がっていました。

それが途絶えて迎えた今年、嬉しい知らせが合唱仲間を通じて届きました。バスで20分の「きゅりあん」が会場なので、即断しました。それが11月で、いわば直前と言ってもよいタイミングです。

普通、アマチュアの場合、12月本番の第九の練習は8月か9月には始まります。ということもあり、対象はすでに第九を歌える人、限定でした。11月下旬に一度練習があり(私は不参加)、あとは本番前日と、当日のゲネということです。

口幅ったいですが、一応暗譜はできていますので、不安はほとんどありませんでした。最後の、Tochter aus ElysiumでPrestissimoからMestosoに切り替わり、ゆったりした後、Freude Schoenerをどのテンポで歌うか、マエストロによりさまざまですから、そこだけが気がかりで前日練習に臨んだのですが、マエストロ長田のタクトは超高速で、これまで10回以上歌った中では最速でした。

終わってみれば、我ながら、素晴らしい出来栄えだったと感動しました。こういう厳しい環境下、舞台で歌えた喜びはなにものにも替え難いものでした。(ちょっとおおげさかも)さらに嬉しかったのは、前日発声指導していただいた、本番テノール高野二郎さんにお会いできたこと。かなり昔から存じ上げて、なんどかコンサートやオペラも鑑賞させてもらっています。休憩時間にあつかましくも、さっそくご挨拶と昔話を。

ご本人にとっても、私にとっても、忘れ難いのは、東日本大震災翌日に予定されていた日本初演のオペラ「フォルテュニオ」(アンドレ・メサジェ)が予定通り中野zeroホールで上演されたことでした。当然ながら、客席はガラガラ。無理もないです。都内、電車は動いたんで、私は行きましたし、そんな中で上演に踏み切ったオペラ・プロデュース、スタッフ・キャストには敬意しかありませんでした。もちろん、高野さんはタイトルロールを熱演でした。

すみません、話が横道にそれました。さて、当日のプログラムは;

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この中で、「つみくさ」以降、4曲を歌った日本音楽高等学校の女声合唱は、合唱指導に定評のある泉 智之先生のご指導よろしく、さすが音楽専門校の生徒さんらしく、見事なアンサンブルを響かせていました。

ソリスト4人による独唱の中では、バリトン福山 出さんの「時代」がことさら印象に残ったのはアレンジもよかったのですが、こういう辛い環境の中で聞いたせいかも知れません。

そして、お待ちかねの第九です。入退場リハも1回こっきりで、何の問題もなくできたのは、団員全員が場数を踏んでいる証拠でしょうか。一般的には、舞台監督が小うるさく、楽譜はこう持てなどなど、細かい指示をいろいろ出すのですが、そういうことは一切なく、ビシッと一発で決まりました。

そのあとに歌う「聖夜」もあるので、一応各自赤い表紙の楽譜を持っての登場でしたが、第九で楽譜を見ている人は、すくなくとも私の視野の中には一人もいませんでした。ちなみに、女声陣は客席前方で歌うことになりました。

第4楽章だけですから、例のコントラバスとチェロによる有名な旋律が低く流れ始めるところからやるわけですが、これをエレクトーン奏者、橘光一さんが一人でYAMAHAのSTAGEAを操作してオーケストラ並みの演奏をしてしまうのですから、驚嘆に値します。ほんと、恐れ入谷の・・・です。ベートーベンも聞いたら腰を抜かすはずです。

それと、今回の珍しい体験は、ソリストが合唱の後ろで歌ったことです。ここは、主催者が一番悩んだ部分と思われます。前に並べるのが一般的なのですが、ソリストはマスクしていませんので、その辺の配慮が働いたのか、山台の二段目に。客席中段のマエストロがぎりぎり見える位置です。

合唱団にとっては普段あまり聞こえないソリストの声が真後ろから響いてくるのは、とても歌いやすかったです。ちなみに聴衆は、マエストロの陣取る、さらに後ろの席ということで、ソリストと聴衆との間隔は最大になってしまいました。

ともあれ、途中事故もなく、めでたく終演となりました。改めて音楽の持つ力をたっぷりと味わうことができ、次回以降もぜひこのイベントには参加したいと思いました。