211227 ROPE 米 80分、1948年(日本公開は14年後の1962年)脚本:アーサー・ローレンツ、監督:アルフレッド・ヒッチコック
ヒッチコックの最初のカラー作品。当時のカラー技術ゆえか、ぼんやりした色調。しかし、本作より3年も早く作られた「風と共に去りぬ」の方が色がはるかにきれいなのは、どういう訳でしょう。どちらもテクニカラーというのに。
内容からして戯曲が先だったということがよく分かります。登場人物が少ないのと、全編が室内で完結しているからです。ただし、映画用に人物設定も含めて大幅に書き換えられたようです。
この作品、80分ですが、ほぼ実際の進行時間に合わせて作られているようで、視聴側もその場にいるような雰囲気にさせられます。テイクはわずかに10、長回しテイクが多いのです。中には、会話は聞こえるが、カメラは奥の人の動きだけを撮っていたりします。
それと、会話の中に、映画や俳優の話が出てくるのですが「私はほら、あの誰だっけ、ああそうそうケイリー・グラントが好きなの」とか「ぼくはイングリッド・バーグマンが好みだなぁ」とか。「そう言えば二人が共演したあの作品、タイトルはなんだっけ?」など。結局、タイトル名は出ませんでしたが、これはヒッチコックの撮ったNOTORIOUS、「汚名」。
必ず自分の作品にちょこっと登場する監督自身、これを探すのもヒッチ映画の楽しみの一つですが、冒頭、俯瞰カメラが捉える通行人ですから、気がつきませんで、冒頭だけ2度見ました。言われてみれば、という感じです。
カメラは高層アパートの最上階へと上っていくと、真昼間というのに、カーテンがしまっています。すると、絶叫が!そうです、もういきなり絞殺現場から始まっちゃいます。脚本家との約束でヒッチはここは映画には出さないことになってたそうですが、約束やぶっちゃったんですね。
あとは、絞殺した犯人二人が、死体を長持風大型物入れに。蓋をし、何食わぬ顔で夕方予定しているディナーパーティーの準備を始めます。普通なら、さっそく死体を別なところに移すところですが、あえてそのままにして、蓋の上にテーブル・クロス、さらにキャンドルやら、取り皿などを並べます。
考えれば恐ろしいですよね、死体のすぐそばで談笑したり、食事したりするわけですから。かなり計算された殺しの現場となります。しかし、あとから(20分後)参加した男(ジェームズ・スチュアート)の推理能力を二人は侮っていたようです。
このあと、招待客5人、ホスト側2人、それにメイドの8人が繰り広げる会話がスリリングです。心理劇で、哲学的な会話が中心になりますが、カメラワークが素晴らしく、退屈することはまったくないまま進行していきます。どの時点、どうバレるのか。ラストまでどきどきしますね。
この作品、ゲイの関係を匂わせるとして、州によっては上映禁止となったところも。あの当時ですからねぇ。
IMDbで予告編を見ると、本番にはないシーンが。それもそのはず、本作撮影前に、別にわざわざ予告編用に撮影しているんですね。ジェームズ・スチュアートのナレーション入りです。ある春の午後、公園のベンチで会話する二人。男はこのあと、アポがあるからと、ガールフレンドと別れます。「彼女が見たこれが彼の最後の姿です。そして皆さんが見るのもこれが・・・。」面白いですね、本編と別撮りで予告編作るって。