ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「桜田門外ノ変」

f:id:grappatei:20101022210217j:image:left101021 新宿バルト9 137分 [監]佐藤純彌(「男たちの大和」) [出] 大沢たかお 長谷川京子 柄本明 生瀬勝久 渡辺裕之

いばらきフィルム・コミッション始め茨城地元関係者が大いに協力し、地元に大掛かりなセットを組むなど、滅多にない力の入れ方のようだが、そうした力みがやや空回りの印象。

まずは主役の大沢たかおはミスキャストではないか。あのご面相がそもそも時代劇向きではない。セリフ回しも西村雅彦同様、現代風でうわずっていて多少耳障りだ。重鎮、徳川斉昭役の北大路欣也、あるいは井伊直弼役の伊武雅刀、他に柄本 明や本田博太郎などは、逆になかなか見ごたえのある演技だ。それと、大金を投じたと言われるセットが、いかにもそれと分かる作りで、まるで歌舞伎の書き割りのような塩梅。もう少し、古く見せるなど、もう一工夫なかったのが、惜しまれる。
f:id:grappatei:20101022210645j:image:left朝廷の許可なく、勝手に直弼がアメリカと和親条約を結んだことを勝手登城の上、直弼を厳しく糾弾する斉昭だったが、逆に大老からやり込められてしまう。

3千の兵で京都に攻め上るはずの薩摩藩と相呼応して、直弼の首級を上げてから京都で合流し・・・・という筋書きだったのが。
どこでどう違ったのか、約束が反故になったから、さぁ大変。暗殺劇に参加した水戸藩脱藩浪士(2名は薩摩藩)たちも、大半は傷つき自刃、他も捉えられて打ち首。逃亡を企てた首謀者たちもすべて捉えられて、この「変」は幕を下ろすことに。

実は薩摩藩では英邁無比の島津斉彬が急逝、後を継いだ久光が西郷を遠島処分にしたりと政変があったのだが、この時代の情報伝達事情による齟齬だからどうしようもない。それにしても、水戸側とて半分は斉昭のお墨付きを得て企てたことであり、こも時代の激しい変化についていけなかったとは言え、「桜田門烈士」たちも気の毒この上ない。
f:id:grappatei:20101022210456j:image:leftと言う訳で、力瘤は見えるのだが、全体に空回りの印象はぬぐえなかった。ただ、早速前半に登場する暗殺シーンの殺陣はうまく出来ていて、思わず見る側も力が入ってしまった。短銃を3丁持っているのだから、それでさっさと片付けてしまえば、見方の犠牲も少なくて済んだと思うのだが、やはりそれでは武士の分が立たないのだろう。真剣を切り結んでこそという世界だから、仕方ない。

不自然だったのは、舞台でもないのに矢鱈に話声が大きく、内密の話をする場面も、障子をはさんで誰が聞いているか分からない筈なのに、音吐朗々だから困ったものである。

#51(画像はALLCINEMA on lineから)