ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「隠された日記、母たち、娘たち」

f:id:grappatei:20101025193729j:image
↑老いたり(67歳)とは言え、ドヌーヴさん、結構なインパクトは健在

101025 川崎チネチッタ 104分 仏 MERES ET FILLES [監]ジュリー・ロペス=クルヴァル(仏女流監督) [出] カトリーヌ・ドヌーヴ 、 マリナ・ハンズ (「みなさん、さようなら」、「潜水服は蝶の夢を見る」) マリ=ジョゼ・クローズ(カナダ出身、「アララトの聖母」、「みなさん、さようなら」、「ミュンヘン」、「潜水服は蝶の夢を見る」)

祖母、母、娘と3代に亘るヒューマンドラマ。カナダ在住の娘オドレー、好きでもない男との間に子を宿してしまい、不安を抱えながら、両親の住む海辺の町アルカションに一時帰国。父は暖かく迎えてくれるが、母マルティーヌはどこかよそよそしく、時間が経過しても、ギスギス感は改善されるどころか、寧ろ悪化していく。何かそこに秘密があるらしいことが徐々に分かってくる。

母は内科医、父は眼鏡屋経営。祖母(ルイーズ)一家が住んでいた海辺の家が空き家になっているので、娘はカナダから持ち込んだ仕事をこなすためにも静かな環境を求め、そこに住み始める。この辺りから、50年の間隔を置いて時代が行きつ戻りつする。同じシーンに祖父と孫が同時に登場したり、よくある手法だ。

そんなある日、ふとしたことから、偶然、大型の手帳を見つける。ルイーズの筆跡でレシピがびっしり書き込まれ、また子供達への溢れるような愛情も書き綴られている。更には現金も挟み込まれている。何故かオドレーはそれをすぐマルティーヌを見せることをしない。

実は50年前、ルイーズはマルティーヌたちを残してある日突如として家を出、二度と戻ることはなかったのだ。以来、マルティーヌの心の中でルイーズは絶対に許せない存在となっただけでなく、周囲にも滅多に自分の気持ちを見せなくなっていた。オドレーを自立する女に育てたのも、そのことに関係があったのだ。しかし、その手帳を目にした途端・・・・そこには意外な真実が隠されていた。

ドヌーヴの貫録には恐れ入る。ますます顔の肉は垂れ下がり、身体は寸胴で、昔の面影はどこへやら。しかし、演技は大したものだ。娘との葛藤を見事な表情とセリフ回しで完璧なまでに表現。マリ=ジョゼさん、調べると随分彼女に作品は見ていることに。なかなかの美形。ハンズがどこか男性っぽく、残念ながら余り見栄えがしないのとは対照的。そして、50年前の雰囲気がピタリと決まっている。出番が少ないが大事な役どころだけに、存在感は素晴らしい。

アルカションは昨年行きそびれたが、ボルドー郊外の保養地。このシリアスなドラマの舞台にしては、ちょっと華やか過ぎないかと思ったが、彩度を徹底的に下げて、また曇天の日ばかり敢えて選んでの撮影らしく、その辺は気を遣っているように見えた。

#52(画像はALLCINEMA on lineからの借り物)