ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「リアリティー」

121023 TOHOシネマズ六本木 東京国際映画祭出品作品。イタリア映画。115分 原題もREALITY 前作「ゴモラ」でカンヌ国際映画祭のグランプリを受賞したマッテオ・ガローネの作品。今回のテーマは、舞台は同じナポリ近郊でも、ナポリの反社会組織カモッラを扱った「ゴモラ」とは対照的。まるでフェデリコ・フェッリーニの映画を見ているような錯覚に捉われる。

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空撮でナポリ近郊を音もなく、なめるように俯瞰して近寄って行くと、二頭立ての馬車、それもド派手に飾り立てた馬車を捉え、ゆっくり近寄ると、やがて広大な邸宅の門の中へと吸い込まれて行く。なかなかシャレた冒頭部分。ある地元富豪の子弟の結婚式が行われようとしている。⬆いかにもナポリ風で、やたらに騒々しく猥雑な雰囲気。

そこへセレブのエンツォがゲストとして呼ばれてヘリで派手に到着。

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主人公は魚屋のルチャーノ。明るい性格で誰からも好かれる存在。リアリティーというジャンルの視聴者参加TV番組「グランデ・フラテッロ」(ビッグ・ブラザー)で人気者になったエンツォに憧れている。家族からオーディションに出ればきっとエンツォみたいになれると持ち上げられ、すっかりその気になってしまったルチャーノ、徐々に現実と幻想の世界の見境がつかなくなって行き、仕舞いには・・・

純真な、子供のような心をもったルチャーノのファンタジー・アドヴェンチャーとでも言おうか。夜陰にまぎれて番組セットに潜り込み、セレブたちが座るソファーに寝そべって満足な笑みを見せるルチャーノを俯瞰したまま、ズーム・アウトするラストが印象的。

ただ、この作品、背景が分かっているイタリア人でないと、なかなか理解し辛い部分が多く、恐らく日本で一般公開されることはないだろう。岡本太郎とか言う字幕翻訳者、失礼ながら、余りお上手でない。確かに全編難解なナポリ方言ゆえ、日本語訳が至難で、多分、同時に出ている英訳から訳したと想像されるが、訳しきれない部分が多過ぎる。

 

#74 画像はIMDbmから