ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「故郷よ」

130226 銀座シネスィッチ 原題:LAND OF OBLIVION (忘却の土地)2011年度作品。他ロシア語も。フランス・ウクライナ・ドイツ・ポーランド合作作品 108分 ナレーションは主人公の一人称でフランス語、話す言葉はロシア語、そしてクレジットは英語という具合。例のチェルノブイリ原発事故を扱った作品。

f:id:grappatei:20130227110305p:plain

 

川辺の洗濯女たちの視線など、まったく意に介さないで、ボートの上でひたすら抱き合い、唇を重ねる二人には、これ以上の幸せはないと感じていた。そう、1986年4月25日までは。

 

翌日は待ちに待った結婚式、生憎の空模様だが、友人や近所の人たちも集って、宴会は盛り上がる。「百万本のばら」のメロディーの乗せて新婚夫婦もダンスに興じていると、消防士の新郎に突然の緊急呼び出し。まさかこんな時にと嫌がる新婦に、すぐ帰るからと言い残して去って行く新郎。やがて黒い雨が宴会場にも容赦なく降り注いでくる。

f:id:grappatei:20130227110340p:plain

一方、原発技師のアレクセイの下にも緊急連絡があり、事故のことを知るが、厳しい秘守義務があり、妻子に直ちに郊外の親戚のところへ行け、子供にはヨウ素を飲ませろとだけ言い残して、取りあえず街に。技術者としての良心と秘守義務の板挟みに苛まれ、彼がしたことは、折りたたみ傘が買い占め、雨に濡れる市民にそれを提供することや、精肉店で、買い物客にその肉は食べないようにと言って、変人扱いされることぐらい。

 

あれから10年、あの日出かけた新婦が家に戻ることはなく、新婦だったアーニャは、世界中から事故現場を見に来る観光客相手にガイドをやりながら、自らも病と戦いつつ、母親と二人暮らし。フランス人の恋人がしきりに結婚してパリに行こうと誘ってくれるのだが、病弱の母親を残して自分の故郷を離れられない。

 

福島を経験した日本人にはことさらこの作品の持つ重みがひしひしと伝わって来て、正直辛い。見終わって、暗澹たる気分で帰路に着くことに。いい映画だが、覚悟がいる。事故の後は、敢えて彩度を落とし、やや粗い画質で、誰にもまったく先が見えない、この呪われた地域全体を覆う閉塞感がよく出ている。

 

主人公役のオルガ・キュリレンコさんは、ウクライナ人で、「007 慰めの報酬」にも登場し、ハリウッド作品にもどんどん登場する今や国際派女優だが、手足が長い以外に余り魅力が感じられない。顔が怖過ぎるし、表情に乏しい。ボンド・ガールのレベルではないでしょう。

 

#13 画像はALLCINEMA on line他