170418 原題:LA FILLE INCONNUE(見知らぬ少女)仏・ベルギー合作 106分 製作・脚本・監督:ダルデンヌ兄弟
サスペンスの趣もあるが、むしろ社会派ドラマ。診療所勤務のジェニー(アデル・エネル)は、若い研修生ジュリアンを指導中、ドアベルを聞く。診療時間を1時間も過ぎており、また自分もそのあとの予定が入っていることもあり、応対に出ようとするジュリアンを制止する。
翌日、付近で黒人少女の遺体が発見される。ドアベルを鳴らしたのがこの少女だったことがやがて判明する。もしあの時、ドアを開けていれば、彼女は殺されなくてすんだのではないか。人の命を救う医者でありながら、死へ追いやったことで、深い自責の念にかられるジェニー。
なぜ、どうやって彼女は死んだのか、一体何者なのか、独自に調べ始めると、自分の患者の一人との接点が見えてくる。調査を中止しろと恫喝され、得体の知らないバックグランドが見え隠れする。
舞台がベルギーのリエージュという小都市であり、移民問題が絡まった社会派ドラマということになれば、やや日本人には訴求力が弱いかも知れないが、ダルデンヌ兄弟が撮った同じく社会派ドラマ「サンドラの週末」に共通する味わい深い作品になっている。
この邦題は見事だ。見知らぬ少女より、よほどインパクトがあると思う。主演のアデル・エネル、愛想がなく、ほとんど無表情なのが、本作の地味な展開にぴったり。
兄弟は、もともと本作の主役にはマリオン・コティヤールを充てたかったらしいが、スケジュールが合わず、代わりに「サンドラの週末」をコティヤールで撮ったとか。
最後は、ちょっと呆気ないと思ったが、これこそがこの兄弟の持ち味なのだろうと思い、納得。エンドロールが淡々と流れる間、診療所前の通りを走る車の音だけ。
#9 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから