ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「バハールの涙」

190128 原題:LES FILLES DU SOLEIL (太陽の娘たち)仏・ベルギー・ジョージア・スイス合作 111分 脚本・監督:エヴァ・ユッソンルアーブル生まれ、41歳)

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とりわけ濃い顔だが、それだけに目力による表現がすばらしいファラハニ。

無慈悲かつ過酷極まるISの蛮行ぶりは、既に世界に発信され喧伝されているが、これは中でもひときわ目を背けざるをえない女性に対する非道ぶりを、女性の目線で克明に描いた作品として、国際社会で多くの人に見て欲しい。

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どこまで耐え続けられるのか、底知れぬ恐怖と戦いながら。左はカメラ取材をするマチルド。

夫も目の前で虫けらのごとく殺され、一人息子は奪われIS兵士として軍事教練が待っている。自らも、妹と共に性奴隷とされ、妹はその後自殺。しかし、絶望している暇はない、息子を奪還すべく立ち上がるバハール(ゴルシフテ・ファラハニ)。女に殺されると天国に行けないと信じるIS兵士に対し、それを武器に次第に優位に立ち、ついに・・・。

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男性兵士顔負けの闘争心まるだしのバハール隊

主役のファラハニが素晴らしい!!彼女の作品は、ミステリー仕立ての「彼女が消えた浜辺」(2009)他、6本ほど見ているが、本作は彼女のために作られたのではと思うほどのはまり役。当然ながら、目に深い哀しみと怒りが宿っている表情がなんとも言えず素晴らしい!

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爆弾の破片で片目になったマチルド(エマニュエル・ベルコ)も好演。

戦場で夫を亡くしたフランス人ジャーナリストが戦場奥深くに乗り込み(多分強力なつてがあったからだろう)、似たような境遇にあるバハールと意気投合、行動を共にする。武器の代わりにカメラしか持たない。祖国に一人娘を残していて、それこそが唯一の生きがいだが、死をも覚悟した、まさに決死の戦場取材である。

冒頭のシーンがエンディングに回帰するわけだが、途中、過去になんどかフラッシュバックするスタイルを取っていて、まったく不自然さを感じさせないエヴァ・ユッソンの手腕には脱帽だ。

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Éva Husson

#4 画像はIMDbから。