190126 「椿姫」を副題の扱いにして、「ラ・トラヴィアータ」としたところが嬉しいね。こうであるべき。(原作は「椿姫」、オペラはLA TRAVIATA)さすが藤原歌劇団!
3日公演の初日を見た。何より、舞台の豪華さには圧倒された。アレッサンドロ・チャンマルーギ、やるねぇ〜〜。それと照明の見事なこと。多少高く払っても、やはり時折は、こうした本格的な舞台を見るべきだなと今日は改めてつくづく思った。
全幕を通じて、絵画、それも近代絵画のうち、雅宴画風なものから印象派風のものまで含めて、何十枚という絵、それもほとんど女性の肖像画中心だが、登場し、舞台をきらびやかに彩る。10m X 5mぐらいもあろうかという半端ないデカさが下手、中央、上手に陣取り、これが照明の当て方で紗幕効果を出して、うしろで演技する人物たちを額縁内に浮き上がらせて見たりするから驚く。
3幕では照明で絵を消し、額縁だけにしてしまい、その前で死の淵にある主人公を演技させたりと、驚きの手法を次々に繰り出していた。
粟国演出も、さすがと唸らせる場面、少なからず。昨年合唱隊の一員で一応、舞台に乗っているから、人物たちの動きがいちいち気になってしようがなかったが、どれも自然で素晴らしい!の一言。
ジェルモンとアルフレードの絡みの場面も目から鱗の演技で、こりゃ凄いものを今見てるのかも知れないと思いつつ、惹き込まれていた。
砂川涼子、期待に違わず、見事なヴィオレッタで、歌唱は完璧で言うことなし。ちなみに、1幕の終わり、「花から花へ」の最後はEsを回避して原音で締めた。(最近はむしろ上げない方が本場でも主流になりつつあるらしい)3幕の死に際の微妙な発声どころも、まったく淀みなく歌いきった。直後のカーテンコールでは、まだ目にいっぱい涙を溜めた状態であり、そのためか、その後、再び登場した時には笑顔がこぼれた。
西村悟は、昨年秋、所沢で見た同オペラの1幕のシェーナを聞いた時に比べると、復調目覚ましい。最高音は、やはりビシッと決めてほしい。なにしろ長身、イケメンで、アルフレードにはぴったりの容姿だからね。
最もブラーヴォが多かったのは、「プロヴァンスの海と陸」を歌った時の牧野正人だった。確かに、安定感抜群の演唱で、この辺りは、まあ年季の入れ方の違いだろう。
2幕2場、踊りが入り、賭け事が行われる進行も素晴らしかった。一つ一つの演技もさることながら、人の流れがごく自然で、西洋ものによくある、とってつけたような演技でなく、日本人でもここまで自然な演技ができることにも瞠目した。
そんなわけで今回は正味145分をフルに堪能できた。
#6 文中敬称略