ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「エンテベの7日間」

191016 ENTEBBE  107分、英米仏マルタ、監督:ジョゼ・パヂリヤ(ブラジル人、51)

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実話に基づいた作品。ドイツ人二人を含む4人のテロリストが、テルアヴィヴ発パリ行きエールフランス機(A300)を乗っ取り、イスラエルの獄中にある仲間の解放を要求した事件。1976年6月のことで、リアルタイムで記憶にある。ベンガジリビア)で給油後、アミン大統領のいるウガンダエンテベ空港へ。

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笑顔で人質たちを歓迎するアミン大統領。

イスラエルは、7日目の深夜、エンテベ空港を急襲し、人質奪還に成功。過去発生した同種のハイジャック事件では、救出大成功作戦として世界の賞賛を浴びた。(翌年のダッカでの日航ハイジャック事件とは対照的な結末!)

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ドイツ人テロリスト(ダニエル・ブリュールロザムンド・パイク)後ろのAFの機体はA300に見立てたA310。

犯人側の描き方が手ぬるいため、なぜ犯行に及ぶことになったのかが見る側にしっかり伝わって来ず、前半の緊迫感が欠ける原因に。一方、悩むイスラエル政府側は、穏健派のラビン首相vs.強硬派ペレス国防相の対立を軸に割と丁寧に描くが、途中、イスラエル軍兵士の恋人ダンサーの群舞がかなり印象的に何度も流れに割って入る。この独特で激しいダンスは、イスラエル人にとって、特別な意味合いを持っているものと想像されるが、我々にはやや意図不明。

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奇襲作戦の予行演習。実際は深夜で、しかも先頭車両はヘッドライトを消して突入。

結局、奇襲作戦に閣僚全員からゴーサインが出て、特殊部隊が出動、見事ほぼ全員を救出することに。死者が25人以下なら”成功”とする思想も凄い!(後に判明したところによると、一人急病に倒れた婦人が首都カンパラの病院へ収容されたが、イスラエル軍が急襲したことに腹を立てたアミンの命により殺害された)

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突入するイスラエル軍、唯一死亡したのはヨナタン・ネタニャフ中佐(元首相の兄)

後半、一転して緊迫感をもたらした描き方は評価に値する。エンドロールは、再びイスラエル人ダンサー(男性)によるゆったりとした独特の舞踊で、背後には女性ダンサーがランニングマシーン上で一人黙々とランニングを続けるという不思議なエンディング。併せて、実写フィルムで解放され喜ぶ人質たちの映像が流れる。

このところ、かなり頻繁にダニエル・ブリュールロザムンド・パイクの作品を見ている。今回は母国ドイツのテロリスト役のブリュールはいいとして、純粋の英国人パイクには外国語となるドイツ語だが、抜群に語学センスのあるらしいパイクはいとも簡単にセリフはマスターしただろう。また、彼女のしゃべる、非英国人としての英語が自然で素晴らしい。

そのロザムンド・パイク出演作品は、Netflixオリジナルを含めると、今年だけで5本日本公開されることになっていて、今や最も旬な女優の一人だろう。

#65 画像はIMBdから