191226 THE TWO POPES 英米伊・アルゼンチン合作、125分 監督:フェルナンド・メイレレス(「ナイロビの蜂」'05)
前教皇ベネディクト16世がどのような経緯から退位することになったのか、またなぜフランチェスコ1世が誕生することになったかを、二人の会話を中心に組み立てられている。ということは、会話のほとんどはフィクションということになるが、それにしては、あまりに自然で脚本の妙というしかない。
実に700年ぶりという生前退位は、まるで我が国の天皇退位を思わせるほど偶然の一致!ちなみにベネディクト16世は現在名誉教皇という立場で、教皇の夏の離宮であるカステル・ガンドルフォに住んでいるらしい。
当時、教皇庁を悩ませていたのは、いくつかのスキャンダル、中でもカトリック教会野中での青少年に対する性的虐待とマネーロンダリングで、教皇自身、ほとほと嫌気がさしていたと思われる。
いっぽう枢機卿の一人に過ぎないホルヘ・ベルゴリオ(後の教皇フランチェスコ)も、同様に嫌気が差していて、教皇に枢機卿辞任を願い出るが、腹案のあるベネディクトはそれを許さない。カステル・ガンドルフォの庭園での、この二人のやりとり、駆け引きが実に面白い。
当初、互いに会話がかみ合わず、特にベネディクトの方がイライラすることが多いのだが、時間の経過とともに、次第に信頼関係が生まれていく描き方も見事。
これを演じるのが偶然ながら、二人ともウェールズ出身のイギリス人で、アンソニー・ホプキンス(82)、ジョナサン・プライス(72)で、彼らの絶妙な間合い、呼吸には感嘆あるのみ。特にジョナサン・プライスは、実際の教皇にかなり顔が似ていることもあり、監督もその点を考慮してこのキャスティングを決定したとか。
みずからフランチェスコという名前を選んだだけあり、アルゼンチンの平凡な家庭に生まれ育ったベルゴリオは清貧を旨とし、この辺は前教皇とは考え方に相違があったようだ。贅沢を嫌うシーンが随所に出てくる。
会議の合間の慌ただしさを縫って、衛兵にピッツァの出前を頼み、ファンタを飲みながらランチをするシーンが微笑ましい。こうした四角く切ったピッツァが定番。フランチェスコが口に運ぼうとするたびに、ベネディクトが何か言い始めるから、なかなか口に入らない。結構笑えるシーン。
質素を旨とし、特別な待遇を嫌う現教皇らしいエピソードが冒頭のシーンで、自ら航空会社に電話して予約しようとするが、名前を名乗ると「教皇と同じですね」と言われ、さらに住所は?と聞かれ、いや、それが、そのお、バチカン市国です、と言うと「冗談はやめてください!」と電話を切られてしまう。その場面が、最後にもう一度出てくる。
#74 画像はIMDbから