ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「アメリカン・スナイパー」

150223 原題もAmerican Sniper 監督:クリント・イーストウッド(製作にもブラドリー・クーパーと並んで名を連ねている)132分 

f:id:grappatei:20150224105720p:plain

2015年アカデミー賞の何部門かでノミネートされていたのだが、結局音楽編集賞という地味な部門の1冠で終わったようだ。

84歳のクリント・イーストウッド、一体いつまで撮り続けるのか。「硫黄島からの手紙」、「父親たちの星条旗」など、戦争映画は何度か撮っているが、繰り返し戦争の惨さより、むしろ愚かさを徹底して描いている。

本作でも、イラクの最前線に4度まで出撃して、五体満足で帰国するもPTSDに蝕まれ、それでも必死で家族との距離を縮める努力を重ね、やっと平穏な生活を手にしたと思ったら、最後はSEALSの仲間に殺されるという悲惨さ。実話を基に作られた作品。

f:id:grappatei:20150224112422j:plain

主人公クリス・カイルに扮するブラドリー・クーパーだが、この映画のために20kg以上も増量したというから、先日見た「フォックスキャッチャー」のマーク・ラファロ以上だ。数ヶ月にわたり、連日8000キロカロリー摂取という驚くべき生活をしていたというから、尋常ではない。また、200kgのバーベルを上げ下げするデッドリフトの場面があるが、実際に本物のバーベルを使用したそうだから、既に相当な腕力を備えていたことになる。

それぐらい本物のクリス・カイルを意識して役作りに没頭していたようだ。クリス本人は2013年2月に、シールズ出身PTSD患者を助けようとして殺されるわけだが、その少し前に本人と電話で会話していたとか。その死は、クーパーにとって、よほどのショックだったろう。

f:id:grappatei:20150224113407j:plain

⬆︎望遠レンズに映る母親と10歳ぐらいの息子の姿。やがて母親が懐から爆弾を取り出し、息子に渡す瞬間が大写しになる。トリガーは引かれるか、手に汗を握る場面。

2001年の9..11事件を目の当たりにし、祖国防衛と同胞を守りたいという強い欲求に駆られるクリス・クーパーは海軍のSEALSに志願、ブートキャンプでの激しいトレーニングを経て、Tour Oneで、まずイラクのファッルージャに派遣される。その後、数週間の帰休はあるものの、Tour Fourまでスナイパーとして激務に晒される。強靭な肉体だけでは、耐え切れるものではない、まさに狂気の戦場。果たせるかな、危惧された通りの軌跡を辿るのだった。

f:id:grappatei:20150224113657j:plain

⬆︎やっと訪れた平穏な生活だったのに・・・。

共演のシエナ・ミラーだが、ついこの間見たばかりの「フォックスキャッチャー」にも出演していたのに、同じ女優だと気が付かないほど個性のない女優だと思った。演技力があるわけでもなく、不思議なキャスティングである。

終幕、クリス・カイルの葬儀シーンでは実写フィルムが一部使われている。棺に打ち込まれるシールズの仲間達のトライデントと称するエンブレムが手で打ち込まれるが、その数、実に100以上というから、ほとんど表面を覆っている。

エンド・ロールには、懐かしやニニ・ロッソの夜明けのトランペットのメロディー(クレジットには"funeral" by Ennio Morriconeと出る)が流れるが、その後はまったくの無音で、文字だけが流れていく。

#011 画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから