190109 SORCERER (魔術師)1977 米 121分(ディレクターズ・カット)、92分短縮版(米国以外で上映時)今回は待望のノーカット版がやっと日本公開。4Kらしいが、たまたま自分が見た地元上映館では2K上映。
言わずと知れた1953年製作のアンリ=ジョルジュ・クルゾーの傑作「恐怖の報酬」のリメイクということになっていて、フリードキン監督も事前にクルゾーから許可を得ているし、エンドロールにも同監督に捧げるという文字が入っている。
だが、オリジナル版とは、かなり変更点が多く、別の作品と称してもいいぐらいだ。山の上の油田の大火災を消すためにニトロが必要となり、それを2台のトラックに分乗する命知らずの素性の知れぬ男たちが賞金目当てに応募して、道中とんでもない困難に出遭いつつ・・・と、そこだけは共通する。
短縮版を公開時にリアルタイムで観ているはずだが、細部はほとんど記憶に残っていない。ということはさほどのインパクトを感じなかっただけでなく、クルーゾ版に比較して余りに不出来で落胆が激しかったということのようだ。
だが、今回、カットされた30分がどれほど重要だったかがよく分かるし、とりわけラストシーンがまるで違う形になっている。短縮版では一応ハッピーエンドだが、120分版では、まるで逆になっている。
なぜこの連中が中米のポルベニール(架空の町)へ流れ着いたかが、前半、メキシコの地方都市→エルサレム→パリ→ニュージャージーのエリザベスという風に場所を変えて描かれている。(クルゾー版では、いっさいこの部分は描かれていない。)
一人が車外に出て、誘導するのだが、このまま轢いて行くとばっかり。オリジナル版では爆発でできた窪みに石油がたまり、ゆうどうするシャネル・ヴァネルがつまづき、そのままイブ・モンタンが轢いていくシーンが余りに強烈だったので、つい・・・。
フリードキンは、当初、マックウイーンを主人公に充てたかったらしいが、マックイーンが嫁さんのアリ・マクグロウと一緒に出演させてほしいという条件を嫌って、この話は流れたとか。その後、クリント・イーストウッド、ジャック・ニコルソン、ポール・ニューマン、ジーン・ハックマン、ロバート・ミッチャムなど、錚々たるスターと出演交渉するもすべて不調で、ロイ・シェイダーしか残っていなかったというから、いかに難航したかということだろう。
仮に、マックイーンで決まってれば、マルチェロ・マストロヤンニとリノ・ヴァンチュラが出る可能性が高かったというだけに、惜しまれる。もしこのキャスティングが成功していれば、興行的にも大成功間違いなしだったろう。
おかげで、ほぼ同時期に封切られた「スター・ウォーズ」に食われて、惨憺たる結果に終わったそうで、あまりにも不運だったというしかない。しかし、本作を最高の作品と高く評価する映画人も少なからず。
ただ、この原題には、やはり首を傾げたくなる。これも敗因の一つではないかしらん。
#2 画像はIMDbから。