ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「あの日の声を探して」

150428 原題:THE SEARCH 仏/グルジア合作 [製・監・脚・編]ミシェル・アザナヴィシウス(妙な姓と思ったら、ユダヤリトアニア人。ただし本人は'67フランス生まれでフランス国籍)

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フレッド・ジンネマン監督、モンゴメリー・クリフト主演「山河遥かなり」(THE SEARCH '48)に想を得て製作。舞台は'45のベルリンを'99、ロシア軍に侵攻されたチェチェンに、主人公は、米兵をEUのスタッフに置き換えている。

目の前で両親をロシア兵に殺されたショックで声を失った少年ハジ、赤ん坊の弟を連れて、住み慣れた我が家を忍び出る。途中、赤ん坊を隣人の家の前に置き去りにして、村を脱出。偶然通りかかったEU職員キャロル(ベレニス・ベジョ)に拾われ、当面、彼女の自宅で面倒を見てもらうことに。

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一方、ロシア人青年コーリアは、友人と街にいるところを、ささいなことから警察に連行され、強制的に軍隊に入隊させられ、徹底的なしごきに遭い、次第に人間性を失っていく。やがて前線に駆り出され、さらに過酷な場面に遭遇するうちに、まるで別人へと。

まるで無関係な話が、最後の最後に交錯するが、同時に暗転してFIN。この辺りの作り込み方は実に巧みだが、つっこみどころがないわけではない。

町中に浮浪者がうようよいるのに、わざわざ ハジだけに興味を持ち、しかも自宅へ連れて行くなど、あり得ない。一方、コーリアの方の描き方もひどい。いくら戦時の規律が乱れた軍であっても、兵舎内で実弾入りのピストルを振り回したり、ましてや、それを新兵に向かってぶっ放すなってことはあり得ない。あまりに雑な描き方!

EU職員に扮したベジョ、演技力は確かだが、この人、アーティストの時はそこそこベッピンさんと思ったが、その後の「ある過去の行方」も本作でも、その辺を歩いていても多分気づかないと思われほど普通の人。白黒作品が似合う、珍しい女優。

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久しぶりのアネット・ベニングさんもまったくのすっぴんで熱演。まだ54歳なのに、一気にシワが増えてしまって、ちょっと気の毒。

それにしても9歳の子役がうまい!!!途中までまったく声を出さず、目だけで演技をしているが、やっとキャロルに馴つき始めた時、突然フランス語で「ウィ」と返事をするシーンはなかなか感動的。ある日、キャロルが一旦外出した後、たまたま忘れ物を取りに戻ると、そこには民族音楽に合わせて夢中で踊りまくるハジの姿が。この踊りがまた唸らせるほど。

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と言うわけで、まずまずの作品。画像はIMdb及びALLCINEMA on lineから

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