ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

1年半ぶりとなるミューザ川崎!

210722 今年もフェスタ・サマー・ミューザの季節となりました。このシリーズ、このホール開館の1年後、2005に始まったので、今年で21回目。多分、全部聞きに行っていると思います。尤も、東日本大震災の2013年と翌年の2年間はホールの改修で、別の会場になったので、行っていません。また、昨年もコロナ禍でネット配信だったので、聞きに行けませんでした。

毎回、多い時は6回、少ない時でも3回は行っていたのですが、今年はとうとうオープニングとフィナーレの2回だけ。今日はそのオープニング。

f:id:grappatei:20210722183913p:plain

プログラムの解説には、こんなことが書かれていました。

開幕公演のテーマはアメリカとフランス。7月はこの2つの国の独立記念日がある。ラヴェルが、弟子入りを乞うガーシュウィンを、「既に一流のガーシュウィンなのだから、二流のラヴェルになる必要はない」とやんわり(?)たしなめた逸話は1928年のこと。シンフォニック・ジャズの金字塔《パリのアメリカ人》はその年の暮れに初演された。その3年後には、ジャズのイディオムを巧みに織り込んだラヴェルの《ピアノ協奏曲》が生まれる。同時期に、それぞれのやり方で融合されたジャズとクラシック。惹かれ合う2つの国の音楽。演奏はイギリスの指揮者と日本のオーケストラ。音楽はたとえどんなときでも、国境も時代も軽やかに超えて世界をつなぐ!

このヴァレーズの「アルカナ」という曲が凄かった!不協和音の連続で、何十種類もの打楽器があちこちから不思議な音を発して、「なんだ、なんだ?!」といううちに終わってしまった感じでした。それにしても打楽器奏者は全員超多忙で、多分、これまで鳴らしたことのない打楽器も含まれていたように思いました。

滅多に聞けない作品を目の前で、しかも名手ジョナサン・ノットで聞けたのは、結構すごいことなんだなぁ、と思った次第です。さすがに、終演と同時に、楽団員は一様にホッとして、団員同士顔を見合わせて、「おつかれさま!」て言い合っている様子でした。

f:id:grappatei:20210722212413j:plain

さて、お次は萩原麻未さんの出番です。現在35歳で、ついこの5月に出産されたそうですが、とても子持ちは見えません。上部が濃紺で、裾の方が少し明るめブルーというグラデーションのあるゆったりしたドレープ性の高いコスチュームで登場、椅子に座る直前にふわりと裾を翻すと、ちょうどいい具合に客席側に広がり、なかなか計算された動作のように見えました。

ま、そんなことはともかく、めっぽう上手いんですねぇ。なんとも鮮やかな弾きっぷりで、耳はもちろんですが、最後まで目を奪われました。

⬇︎さもありなんですねぇ、こんなすごい略歴なんですから!

f:id:grappatei:20210722191225p:plain

このラヴェルの演奏は忘れることのできないものでした。軽やかで、華麗で、まさに心も浮き立つような演奏でしたから、万雷の拍手、鳴り止まず。何回カーテンコールやったでしょう。

そして、お馴染みの「パリのアメリカ人」。冒頭からノットは指揮台でほとんど踊りまくるというような指揮ぶりで、ノリノリでした。見た目は、割りに謹厳実直そうな、見るからに英国紳士然としいるマエストロなので、ちょっと意外な感じも。

途中、もうこれは完全にジャズ!って思われるところがあって、演奏する楽団員も実に楽しげ、もちろん我々聴衆も。つい手拍子を打ちたくなるほどでした。特に中間部あたりでトランペットがけだるいメロディーを吹くあたりはゾクゾクします。

愚亭はこの作品、まずは映画「巴里のアメリカ人」で初遭遇。1951年の作品(日本公開は翌年)をリアルタイムで見ていますが、それは豊洲在住の小5時代。おそらく家族で一番近い銀座の名画座あたりで見たようです。音楽よりも色彩豊かなダンス・シーンに心を奪われました。振り付けも担当したジーン・ケリー主演ですが、相手役は彼自身が発掘した、当時シャンゼリゼー・バレエ団にいたレスリー・キャロン。横道にそれました。

上にも書いてありますが、面白いですよね、アメリカ人(と言っても、本名はガーショヴィッツというユダヤ系ロシア人)が作曲したジャズ風の作品を、典型的な英国紳士が日本で日本の楽団で指揮するのですから。そのことだけでも、音楽の素晴らしさを改めて感じ入ってしまいます。次は8月9日のフィナーレ。