この邦題のつけ方は見事!ついでに、上のチラシの図柄もなかなか。キログラム原器が主人公という、かなり風変わりな作品。「キッチン・ストーリー」も、相当変わっていたので、これがこのベント・ハーメルの持ち味なんだろう。
「人生の一番の重荷とは、背負うものがないこと」など、かなり哲学的なセリフがちりばめてあって、北欧の青白い静謐な室内空間での画面作りもどこかシュールである。
ほとんど笑顔なしのマリエ(アーネ・ダール・トルプ)は、いかにも理系女子風で、ほとんど無駄のない生活ぶり。母に死なれて、今は心臓疾患を抱える父親と同じ仕事、つまり国立ノールウェー計量研究所勤め。ガソリン・スタンドの計量が正しいかどうかのチェックをして、お墨付きのシールを貼ったりしている。
病床の父に代わって、パリ郊外にある国際度量衡局へ出張する。主要各国の代表がそれぞれその国の原器を持参し、精度を確認するという、かなりセレモニー的な会議である。世界でたった一つしかないホンマもんのグラム原器のご開陳で、各代表が息を呑むように凝視する姿がどこか滑稽である。
父親が納屋で倒れ、間も無く死亡。亭主とはすでに離婚、かなりの精神的打撃を被っている最中に、自ら運転する電気自動車が路肩から転落し、パリから持ち帰った大事なノールウェーの原器を壊してしまう。さあどうするか。ここからの展開が結構楽しい。
決して美貌ではないこの女優、いかにも北欧系のクールさが、うまく生かされていて、このキャスティングは良かった。
まさかのエンディング!
なお、この二人のデートの場所になったLe Pure Cafeは、しばしば映画に登場する、ちょっと下町雰囲気のある11区のカフェ・ビストロ
#85 画像はALLCINEMA on lineから。