180706
昔、なんどか落語を聞きに行ったことのある大塚駅近くの、かなり時代がかったホールで、メリーウィドウを観るとは思わなかった。まあいろいろ裏事情があるようだが、もちろん予算の関係もあり、また青島広志は同じ区内在住ということもあって、どうやらここに落ち着いたようだ。
両組2回公演だから、ご覧のような陣容。豪華かつ多数登場し、まことに贅沢な公演!
いつものことだが、応援している江口二美が登場するだけでなく、旧知の歌手が何人も出演する公演ゆえ、翌日に控えた大田区合唱連盟のコーラスフェスティヴァルの最終練習のことも気になりつつ、チケットを確保していた。
それだけの甲斐のある、記憶に残る公演だった。「メリー」も「こうもり」も演出家次第で、適当にいろんなものを中に混ぜ込むのだが、青島広志にかかると、あら、不思議、これぞ青島マジック。「ええーっ、ここで?!」という感じで、さまざま仕掛けがある。
第2幕では、突如和服姿の前澤悦子が乱入してきて「明智さん、明智さん」と、青島広志の「黒蜥蜴」からのアリアを歌い始め、一同あっけに取られる場面はたっぷり笑いを取っていた。これでは、まるで大昔、日テレの番組シャボン玉ホリデーの中の植木 等だ。
やはりオペレッタだから、多少羽目を外してでも会場を沸かせようという青島広志の腕の見せ所で、まさに面目躍如というところか。
みなさんほんとに芸達者で、4人のソプラノによる「春の声」は抱腹絶倒で圧巻。特にユミユミこと坂野由美子のずっこけぶりは、以前も見ているが、年季が入り、必見!その後に、江口二美がしっとりと「ヴィリアの歌」を歌い、会場が一転聞き惚れて静まり返る。この辺のアクセントの付け方は青島流と言えるだろう。
他に久しぶりに拝見・拝聴したが、ソプラノの猿山順子!結婚、出産を経験されてるが、これぞ妖精という可憐な姿は以前と変わらない。
いろんなメリーを見ているが、多分これほど笑った公演は初めてかも知れない。超満員になるわけだ。
気になる伴奏、今回は青島広志はいっさい登場せず、ピアノ、ヴィアオリン、チェロで構成。指揮、副指揮(及び)ピアノには、いかにも青島広志好みのイケメン若者が担当。何人かは、エンディングのワルツにも登場させており、あえて伴奏者にもスポットを当てる試みか。
舞台はパリでなく、なぜかエドという設定ゆえ、グリゼット(お針子)たちが歌う♪パリの夜には、私が相手よ♪をエドの夜には♪と替えていて、この部分を会場に歌わせてみたり、主題歌とも言える「唇は語らねど」のハンナとダニロのダンス部分は会場にハミングさせ、巧みに舞台・客席の一体感を醸成していた。
会場にはなぜかデビ夫人の姿が。どうやらカミーユを演じた下司(しもじ)愉宇起がお目当らしいことが、終演後の親しげな挨拶から窺い知れた。この下司愉宇起だが、タッパもあり、高い声も出せるが、声質や風貌体格からすれば、ミュージカル向きのように感じた。
左から下司愉宇起、猿山順子、江口二美、宝福英樹、「小山」のゼッケンは澤田浩一。
出演者が、並んで観客のお見送り。ロビーが狭いから、この混雑ぶり。手前は柏原美緒(オルガ・クロクロ)
左はもちろん江口二美。中央はニエグシュ役の水野賢一。この人の演技で随分笑わしてもらった。右側は宝福英樹。落ち着いた演技、所作振る舞い、しっとりとしたバリトンで、ダニロ役にはうってうけである。
ああ、やっぱり、オペレッタはいい!
#38 文中敬称略