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ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「疑惑のチャンピオン」

映画

160711 原題:The Program イギリス 103分 監督:スティーブン・フリアーズ(英、'41生まれ、「あなたを抱きしめる日まで」 (2013)

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あるスポーツ選手のドーピングを扱った話。日本ではさほど知られていないが、ロードレースでは世界最高峰と言われるツール・ドゥ・フランスで総合7連覇という、前人未到の偉業を達成した(後に剥奪)アメリカ人、ランス・アームストロングの栄光までの軌跡と、ドーピングに染まる現場、手口などを克明に紹介しつつ、”落ちた偶像”となるまでを、実写フィルムを交えながら手際よく描く。

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主役を演じたベン・フォスター、準備段階から、この過酷な撮影のためにあるドラッグを使用したことを認めているが、肉体的なこと以上に、世間を長期にわたって騙し続けたフェイク・チャンピオンを演じることに精神的苦痛を感じたと、撮影秘話として明かしている。

この種の作品では常套手段だし、止むを得ないことだが、実写フィルムの出番が頗る多い。そうでないシーンとの画面の鮮明度があまりに違うのが難。

いわゆる組織ぐるみの隠蔽工作を、7年以上も続けられたという信じ難い事実、翻って昨今のFIFA幹部の金銭問題や、ロシアの国家ぐるみのドーピング問題に一脈通じるところがあって、その意味でも大変興味深く見られた。所詮、大金を前にすると、なす術のない人間たちよ、ということか。

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フランス人俳優のギヨーム・カネが、ドーピングを指導するイタリア人悪徳医師を演じている。メイクで、最後まで誰だか分からなかった。英語を喋るイタリア人俳優が見つからず、仕方なく彼に声をかけたと監督が語っているのが面白い。だって、その気になれば、いくらでも英語のできるイタリア人俳優はいるはずなのに。ギヨーム・カネダイアン・クルーガーの元旦那)は、フランス式訛りでなく、器用にイタリア訛りの英語を喋っているのはさすがである。

 

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ツール・ドゥ・フランスでは、チャンピオンはマイヨ・ジョーヌ(黄色のジャージ)を着用するが、この作品のタイトルバックはこの色と黒だけで、実にクールな構成である。 上のポスターで、下に見えるのは注射器。そして「勝利は彼の血液にあり」と。蛇足ながら、この邦題の付け方はうまい。

 

#56 画像はIMdb、およびALLCINEMA on line, YouTubeから。