ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「シカゴ7裁判」@Netflix

220103 THE TRIAL OF THE CHICAGO 7 米 2020 脚本・監督:アーロン・ソーキン

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秀作です。1968年、実際に行われた裁判を扱った作品で、登場人物もほぼ実在です。その頃、この一件は多分日本でも報じられたはずですが、愚亭はすでに社会人2年目でしたがリアルタイムではまったく覚えていません。

ベトナム戦争に無理やり駆り出され前途ある若者たちが遠く離れた地で殺されていくことに対して激しく反対する勢力がシカゴで大規模なデモを行い、警察と衝突する事態となります。首謀者とされた7人が起訴され裁判となるのですが、公正たるべき裁判官の偏見により裁判は長期化し前代未聞の結果となるまでを緻密に描く法廷ドラマです。

キャスティングが実に贅沢そのもの。エディ・レッドメイン(トーマス・ヘイデン)、アレックス・シャープ(レニー・デイヴィス)、サシャ・バロン・コーエン(アビー・ホフマン)、ジェレミー・ストロング(ジェリー・ルービン)、ジョン・キャロル・リンチ(デヴィット・デリンジャー)、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世(ボビー・シール)、マーク・ライランス(ウィリアム・クンスラー)、ジョセフ・ゴードン=レヴィット(シュルツ検事)、フランク・ランジェラ(ホフマン判事)、マイケル・キートン(クラーク)

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この人、フランク・ランジェラは現在84歳ですが、名前から察せられるようにイタリア系アメリカ人です。

愚亭が初めてこの名前を知ったのは1971年の「パリは霧にぬれて」というフランス映画です。名匠ルネ・クレマンの脚本・監督のスリラーで、音楽はあのジルベール・ベコー担当するという豪華盤。でも、作品としては凡作でしたが。相手役はまだ若かったフェイ・ダナウェイです。その後、彼はニクソン大統領を演じて話題になったりしてます。本作でも演技が光ります。

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出番は少ないですが、マイケル・キートンの存在感は大したものです。

主役級の3人、レッドメイン、ライランス、バロン・コーエンは英国人です。バロン・コーエンはこの役柄のオファーにだいぶ渋ったようです。というのも、この役のボストン訛りには自信がないとうのがその理由だそうですが、ソーキン監督に説得されて出演したそうです。特に違和感がなかったですが、最近、英国人俳優が登場するアメリカ映画は増える一方です。その逆はあまりないようですが。

エンド・ロールで主役たちのその後がテロップで出ますが、アビーとジェレミーがその後、自死と事故で亡くなっていることに驚きます。逆にヘイデンはカリフォルニア州議会議員となり連続6回当選を果たしているようです。裁判官のホフマンについては全米の弁護士の7割が不適格という烙印を押したそうです。

仮に日本で似たようなことが起きたとしたら(起き得ないでしょうけど)、どういう経過を辿ったでしょうか。おそらく闇から闇へと葬られ、何もなかったことにされたような気がしてなりません。もり・かけ・さくら、河合夫妻の件を考えると、そんな気がしてなりません。アメリカだからこそ、こうした展開になり最後は正義が勝ったのではないでしょうか。