ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「否定と肯定」

171222 原題:DENIAL(否定)英米合作 110分 監督:ミック・ジャクソン(74歳、英国人「ボディガー」1992)原作:デボラ・リップシュタット

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久しぶりに観た重厚な法廷ドラマ!ホロコーストが実際に起きたことを証明しないと敗訴?そんなバカな!!と思うが英国の法律ではそうなんだから、米国人の被告が驚くのも無理はない。

これ、実話に基づく作品ということで、見どころ多し。法廷ドラマゆえに退屈するかと覚悟して行ったらと、んでもない!ずーっと画面に釘付けになり、最後の判決がどうでるか、すっかり被告側に感情移入してドキドキして幕切れを見守った。

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歴史学者と名乗りながら、ろくに裏も取らずにホロコーストはでっちあげという論理を展開する⬆︎アーヴィングという英国人を自著の中でこっぴどく批判したら、逆ギレして名誉毀損で訴えられてしまったユダヤ歴史学者、デボラ・リップシュタット(演じるレイチェル・ワイスも、英国籍ながらハンガリーユダヤ人。Weiszというスペルでそれと分かる。まさにぴったりの役どころ)

英国の王立裁判所で裁かれることになり、彼女には英国の大弁護団がつくことに。しかし、自分の証言はもとより、ホロコーストを生き延びた生存者を出廷させないとする英国の弁護スタイルについていけず、イライラがつのる。それでも英国の裁判だから、自分の主張は引っ込めざるを得ず、最後は、彼らに委ねたおかげでギリギリで勝訴をかち取るまでの息詰まる展開を描く。

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アウシュビッツガス室の検証まで敢行して、アーヴィングとの論争に備える緻密極まるバリスター、リチャード・ランプトン(トム・ウィルキンソン)の弁舌が冴え渡る場面が最高の見せ場。ちなみに劇中、法廷でのセリフは一字一句すべて実際の記録に基づいて用意されたという。

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主役の二人も含め、ほぼ英国人俳優で占められているが、ワイスは米国人役だから当然として、ウィルキンソンスコットランド人という設定ながら、ハリウッド映画の出演が長くなり、米語に近い発音になってしまっているのが、ちょっと残念。

#91 画像はIMDbから。