ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

激動の昭和史 沖縄決戦

180217  149分 脚本:新藤兼人、監督:岡本喜八

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1971年7月17日公開作品。公開後すぐに日比谷劇場で見ている。在外支店へ転勤が決まり、ヴィザ発給を延々待つ日々。とうとう挨拶に行くところもなくなり、今だからこそ明かせるが、勤務時間中に見に行った作品。オフィスに戻ると担当者から、「今日、ヴィザが出たと大使館から連絡があったのに、一体どこに行ってらしたんですか?」と詰問され、返答に困ったことをよく覚えている。

それはさておき、今日改めて見たら、ほとんど内容を覚えていないことに愕然。しかも、名画と言えるほどの傑作というのに、情けなや!

今から47年も前の作品とは到底思えないほど、戦闘シーンがうまく撮られていることに驚く。当時はC.G.など存在していない時代だけに、こうした凄まじい戦闘シーンの撮影には相当な困難を伴ったことは間違いない。

数ある戦争映画の中でも、傑作に数えられる価値は十分!ケン・アナキンらが監督を務めた「史上最大の作戦」や、スティーヴン・スピルバーグの「プライベート・ライアン」に比肩しうる作品であろう。生々しい場面が多く、途中、いい加減辟易もするが、それこそが現実だということを岡本は訴えたかったのだろう。

第32軍を任された牛島中将(小林桂樹)、圧倒的な物量に物を言わせてじりじり米軍に追い詰められ、ついに6月23日、中将の自決を持って集結することとなる沖縄決戦。大本営から見放され、兵站はほぼ断たれ、なすすべなく島民15万人を巻き添えにして10万の軍もほぼ全滅という、近代戦でも珍しい一方的な敗戦は、そもそも戦う前から情報戦でも負けていたことになる。

さまざまな資料を渉猟し、また残された民間人も含めて遺書などからの挿話などを集めて構成したと思われるが、新藤兼人の脚本力にも脱帽である。

もちろん実写フィルムや、解説的なナレーションが随所に入ったり、やや耳障りとも思える音楽が気になったりもするが、よくぞここまでと思えるほど、あの時代の条件下で細部まで分け入り作り込んだことにはスタッフ・キャスト陣に対する敬意しか感じられない。

キネカ大森もこういう作品を取り上げてくれるとはエライ!今日も、もぎりに片桐はいりがいて、普通にスタッフとして気持ちよく対応してくれた。彼女の出演している「勝手にふるえてろ」もかかっていたこともあるのだが、近くに住んでいるからと言って、一応名の知れた女優であるのに、いつも感心してしまう。

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