190710 ZIMNA WOJNA ポーランド/英・仏合作 監督:パヴェウ・パヴリコフスキ
製作本数は限られているとは言え、ポーランドは良質な映画をこれまで世界に問うてきている。まっさきに思い浮かぶのは、なんと言っても「灰とダイアモンド」('59)と「地下水道」('56)で、どちらもアイジェイ・ワイダ監督作品。
その後も多くの話題作を生んでいるが、本数自体多くはないし、日本公開となるとさらにほんの一握りになるのが残念である。また、ポーランドだけでは資金面、宣伝面、あるいは配給面で厳しいらしく、概ね英仏独あたりとの合作製作となる。本作も同様。
第2時世界大戦終結後、さんざん国土をソ連とナチスに踏みにじられた新生ポーランド、ソ連に押さえつけられながらもなんとか自立しようと立ち上がりかけた1949年から物語はスタートする。
ポーランドの民族舞踊団を立ち上げようとピアニストのヴィクトル(トマシュ・コット)は、養成所でのオーディションで一人の有望な若い女性を見つける。ズーラ(ヨアンナ・クーリク)は、歌唱、舞踊に優れた才能を発揮し、ヴィクトルの期待に応える。
いつしか二人は恋仲に。しかし当時の共産主義体制は、立場も育った環境もまったく異なる二人が自由に恋愛できる環境ではなく、次第に息苦しさから亡命を考えるようになる。幸い舞踊団の海外公演という絶好の機会があり、ヴィクトルはズーラに仕掛けるが・・・。
舞台はワルシャワから東ベルリン、ユーゴスラヴィア、パリと移り、音楽も民族音楽、クラシック、ジャズ、ロックなどめまぐるしく、時に騒がしいほど響く流れに、二人は翻弄されながら、別れてはまた一緒になりを繰り返し、13年後、ヴィクトルの刑期明けに再会を果たす。
全体のストーリーは、監督自身の両親の実体験をベースにしているとされる。
同じ敗戦国でも、日本始め他の第2次大戦敗戦国と異なり、国土を完膚なきまでに荒廃させられ、国の形まで変えられたという点で、我々の想像を超える悲惨さを味わったポーランド。そこを舞台に繰り広げられる男女の愛憎劇を描くにはカラーでなくモノクロ、スタンダードサイズを選んだ見識は評価されよう。
主演のヨアンナ・クーリクの演技にも目を瞠るものがある。この人、きれいなのか、そうでないのか、場面により、カメラアングルにより、まるで別人のように映るから不思議だ。
#42 画像はIMDbから