ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「スターリン葬送狂騒曲」

180820 THE DEATH OF STALIN 仏・英・ベルギー・カナダ合作 107分 監督・脚本(共):アーマンド・イアヌッチ(英)

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1953年に死んだスターリンの後継を巡る争いを皮肉たっぷりに描いた作品。必ずしも事実に即しておらず、脚色してあるが、あながち的外れでもないようで、それが原因かロシアおよび周辺の旧ソ連に属したキルギスカザフスタンアゼルバイジャンなででは上映禁止扱い。やはり触れられたくない部分が含まれているからこその措置だろう。

原題は単に「スターリンの死」という、なんとも味も素っ気もないものだが、邦題の方が本作ではぴったりという感じだ。当時のソ連の実力者たち、結局後継となったフルシチョフを始め、ブルガーニン、マレンコフ、ベリア、ジューコフ元帥などが群がって、面白おかしく争いを始める。

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笑いながら見ていたのだが、後半、一転して暗くむごたらしい場面が登場し、後味はあまり良くない。まず、スターリンの遺体処理のシーン。若い医師が3人ほど登場、アッという間に、頭の皮を剥ぎ、ノコギリでギコギゴと。スターリンの脳を取り出すのだが、それって、彼ほどの政治指導者の場合、普通のことなのか。なんとも凄まじい蛮行だ。

続いて、とかく他の政治局員たちとの折り合いが悪く軋轢が絶えなかったとされるベリアが粛清され、あっという間に裁かれて、即銃殺、さらにその場でガソリンをかけられて焼却処分。実際には9日後に裁判を行われたわけで、この辺はかなり思い切った脚色である。上の写真で右端はスティーブ・ブシェミ扮するニキタ・フルシチョフ。中央、勲章だらけの軍服姿はジューコフ元帥。(ジェイソン・アイザックス

まあ、これだけのシーンが含まれているとなると、ロシア及び周辺国で上映禁止扱いになるのも、当然かも知れない。

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権力を手中にし、音楽会に臨むフルシチョフ夫妻。だが、すぐ斜め後ろには次を狙うブレジネフが控えている。

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撮影中にジューコフに扮したジェイソン・アイザックスが主要出演者たちと自撮りに興じている。重苦しい撮影の中で、いかにも和気藹々で、その落差が面白い。

出演者たちは、それぞれが自分が普段話している発音で英語を話したそうで、英語、米語が入り混じっての会話となったが、それがまたよい結果を生んだとか。監督は敢えてロシア訛りを排したそうだ。無用なプレッシャーを出演者たちにかけまいとしたのが理由らしい。

 

#61 画像はIMDbから。