180821 急に思い立って、横浜へ。
どうもこの展覧会のタイトルが気にかかる。何から100年なのか。調べると、モネが、友人でもあった当時のフランス首相、ジョルジュ・クレマンソーに、第1次世界大戦の戦勝祝いに大装飾画「睡蓮」を国家に寄贈することを約束した年に過ぎない。
現在、オランジュリー地下の楕円形の室に見られる大作であるが、二人の間では、当初ロダン美術館の一角にわざわざピヴィリオンを造って、そこに収められることになっていたらしい。が、その後、主として財政的事情で当計画を断念し、オランジュリーとなったもの。
モネは亡くなる1926年までの8年間、意欲的に制作活動を続けていたので、1918年という年は余り意味を持たないような気がする。美術館側の都合で、今年の開催に合わせて、このキャッチを捻り出したのか。要するに、あの”辺り”から100年で、モネの絵が内外の画家にどのような影響を与えたのか見てもらうのが狙いのようだ。
それにしてもモネの作品は23点と、期待していたより少ない。しかも、すべて国内の美術館や企業から借りた作品ばかりで、著名な作品はほぼ来ていない。そのことにも少々驚いたが、同時に国内所有のモネがこれだけあるという事実にも驚かされた。確かに傑作と言える作品は限られていると思うが、モネはモネである。これは少し誇ってもいいかも知れない。
たまたま原田マハ著「ジヴェルニーの食卓」を読み終えたところで、最終章がモネだったから、タイムリーに本展を楽しむことができた。睡蓮は確かにいい!素晴らしいが、作品数が圧倒的に多く、散々見て来たので、むしろその他の作品への興味が強かった。
中でも、テムズ川を描いた2点が圧巻!ロンドンに住むとよく分かるが、長い冬の夕景色はまさにあのようにぼやーっとしたバラ色が差し込む風景が多い。どちらもチェアリング・クロス橋を煙を吐きながら通過する汽車が描かれていて、ぼんやりした太陽が川に映える暮れなずむ景色に、思わず陶然となる。
影響を受けたとみなされている日本の現代画家の中では湯浅克俊の作品に目が行った。カメラで撮影した風景を特殊な技術で版画に起こして、4色で擦り上げるというスタイル。だいぶ前にテレビでも制作風景が紹介されていたので、覚えていた。光と色の組み合わせによる制作法が無数にあることを知らされた。
そういう意味では、単にモネの作品および同時代の画家の作品を並べるだけに留まらない今回の企画はなかなか見ごたえがあると言える。
展覧会の詳細 ➡︎ 「モネ それからの100年」