220626
この二期会週間シリーズ、以前から割りに多く出かけていますが、今回は最終日のみ予約していました。3日目ですが、「二期会物語」の2日目となります。開演10分ほど前に行ったら、ほぼ満員でした。さすが歴史と伝統を誇る団体のコンサートです。それにコロナ明けが近いということも手伝ってのことでしょうか。
客席にはオペラ歌手ほか関係者の姿が普段より断然多く見かけました。進行は中堅どころのテノール高田正人さん。この方、歌以外にも話術に長けているだけでなく、文才も豊か、まさに口八丁手八丁、どの分野でも活躍できる逸材です。
冒頭、プロジェクション・マッピングを多用(背景が茶色だったのが惜しい!)しながら、この団体を立ち上げた男女4名の歌手に扮した方々が男子は浴衣姿、女子は当時風のコスチュームで登場し、寸劇を披露。なんでも初日と途中まではまったく同じ展開だったと高田さんが明かすと、場内しばし爆笑でした。
出演者は上はレジェンドの伊原直子さんから、若手では最近進境著しい種谷典子さんまで11名が登場、舞台を最大限に盛り上げてくれました。
6番目にゲストで登場したその伊原直子さん(77)のハバネラは鬼気迫るほどの迫力、というより円熟を極めた人たちだけが放つオーラがむんむん漂いました。歌え終えて、さすがに消耗されたように見えました。
トークに移ると、いきなり「ハバネラじゃなくって、私が歌うとババネラね?」などとジョークを飛ばし、これには司会も思わず笑ってしまうという一幕も。今後、このようにカルメン衣装をまとってハバネラを歌われることは稀だと思い、しっかり目に焼き付け、耳朶に残した次第。
いきなり本格復帰を果たした坂井田真美子さんがスザンナ役で登場、フィガロの三戸大久さんといい二重唱を聞かせてくれ、ちょっと感激でした。それにしても、フィガロが室内を計測するところで、🎵三尺!🎵と始まり、新鮮でした。
坂井田さんは、難病でここまでまるまる5年くらいかかったことになりますからね。後半、あえて最新式の車椅子姿で登場して、ここまでの苦難の道のりをかつて共演した高田さん、三戸さんと語らっていたのが素晴らしく感動的でした。
宮本益光さんと大学同期のカウンターテナーの弥勒忠史さん、日本初演となるブリテンの作品を歌われました。珍しい声種ゆえ、オペラでは、あまり出番がないものの、逆にカウンターテナー登場の演目では、オーディションなしで出演が決まるそうです。
ワーグナーを歌われた山本耕平さん、上も下もよく響くし、すごい熱量を感じました。小柄なのに、よくぞあのような響きの声が出てくるものと、驚きでした。後半、三戸さんとの「愛の妙薬」では、三戸さんが巨体だけに、ことさら可愛らしいネモリーノでした。
後半には日本のテノールを代表する一人、樋口達哉さんが登場、朗々と「エドガール」、「アンドレア・シェニエ」のアリアを披露し、会場を唸らせました。
近年、訳詞やプロデュースでも活躍されている宮本益光さん、さすがの名唱、今更ながら、この人のうまさを実感しました。重唱場面ではいつのまにか懐から小さなハーモニカを取り出して演奏に洒落た味付けをしていました。
加耒 徹さんの活躍ぶりは今更ですが、リート、宗教曲、オペラと活躍の幅が広く、安定した人気(特に女性ファンからの)にも支えられ、これから日本のバリトン界を牽引していくのは間違いないでしょう。
二期会では今や常連の嘉目真木子さん、チャーミングでこの人ほど”歌姫”という言葉がぴったりの人も珍しいのではないでしょうか。ちなみに二期会の過去の公演人気ランキングでトップから5位までの演目すべてに登場しているというから、人気ぶりが窺えるというものです。
今回、レジェンド伊原を別にすればメゾでひとり気を吐いた成田伊美さん、久しぶりに聞きましたが、格段にうまくなっていて、精進ぶりが著しいと思いました。
若手ホープ、ソプラノ種谷典子さん、もうすっかり二期会の看板娘の一角をしっかり足固めしています。この若さでこれだけの出演機会があるのは、よほど期待が大きいものと思わざるを得ません。
蛇足ながら、愚亭はコロナ直前の大田区のオペラ・プロジェクト第1弾「こうもり」でこの種谷さんと同じ舞台の乗るというチャンスに恵まれました。この話、あちこちで既にしていますが、今後も自慢話の一つとなりそうです。