ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「レディ・マエストロ」

191013 DE DIRIGENT (英語タイトル:THE CONDUCTOR)139分 オランダ映画、脚本・監督:マリア・ペーテルス 実話をベースにしたフィクション。オランダ映画を見るのは久しぶりだ。

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1926年のニューヨークから物語はスタートする。この時代、女性の社会進出は今では想像できないほど遅れていた。そんな時代背景で、女流指揮者を目指すと言うことが、どれほど突拍子のないものだったか。

主人公のアントニア、複雑な家庭環境にありながら、音楽への情熱だけは異常なほどで、周囲からどれだけ笑われようと止められようと諦めない、鋼のような意思はどこから来たのか。ついには、伴侶となる筈だった理想的な男をも音楽の犠牲にしてしまう。

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まあまあ悪くない指揮のフリ。違和感、それほどなかった。

障害をいくつも乗り越え、ついに成功をつかみとるのだが、裏では彼女の知らないところで、いくつかの支援の温かい手が差し伸べられていた。このことが後に明かされる場面は、本作でも一番感動する。

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主演女優、そこそこの美形だが、あごに特徴あり。

ただ、序幕で、彼女がニューヨークの音楽ホールの案内係として学費稼ぎをしていたのだが、凡そリアリティーに欠けるあり得ないシーンが続いて、こりゃダメだと思ったものの、後半盛り返して、終わってみればそこそこの出来栄え。

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「オーケストラ!」(2009)でヴァイオリニスト役のメラニー・ロランに似ている。

主演のクリスタン・デ・ブラーンという、いかにもオランダ人らしい名前の女優、仏女優メラニー・ロランさんをすこしばかり彷彿とさせる。

結局、一応の成功はするものの、首席指揮者にはとうとうならないまま、1989年、87歳で没した。エンドロールの字幕で、女性だけで編成した管弦楽団では幕開けにルーズベルト大統領夫人が来ることに(これも彼女の元婚約者が仕掛けた支援の一環)なったことで、セレブたちが押しかけ、大成功を収め、その後も順風だったが、楽団員に男性を入れ始めると人気が凋落したと。

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本物のアントニア・ブリコ、男勝りという感じだが、あごだけは主演女優に似ている。

さらに、2017年の調べで世界の人気オケのランキング50位中、首席女性指揮者はゼロであると。今でも狭き門であることには変わりないようだ。確かに日本でも、つい最近ブザンソンで沖澤のどかさんが1位となったが、西本智美、松尾葉子、三ツ橋敬子など数えるほど。料理長同様、かなり特異な現象と言えなくもない。

#61 画像はIMDbから