ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「真実」

191015 LA VERITÉ (真実)108分、日仏、脚本・編集・監督:是枝裕和

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⬆︎イタリア語版ポスター。VERITÀはいいとして、何故か冠詞だけは仏語のまま(それとも敢えて複数形?)。

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英語版

大女優ファビエンヌカトリーヌ・ドヌーヴ)の自伝的作品「真実」が出版された。今はニューヨーク暮らしの脚本家、娘のリュミール(ジュリエット・ビノーシュ)に原稿の段階で見せる約束だったのに・・・

出版祝いに夫ハンク(イーサン・ホーク)、それに幼い娘とパリ近郊にあるファビエンヌの家にやってくるリュミール一家。

リュミールの不安的中で、「真実」と題しながら、肝心なことは抜けている、真実でないことが盛り込まれている・・・と散々不平を鳴らし、ファビエンヌと早速諍いを起こす。

もともと感情のすれ違いばかり起こして来た母娘だが、周囲を巻き込みながら、かなり険悪なものになりつつあり、日本人にはあり得ないようなかなりキワどいことまで言ってしまう(是枝が考えつかないほどの)のだが・・・予想されたことながら、最後はまあまあ・・・と言うふうな収まり具合。

それにしても、これを日本人の監督が撮ったということが、相当な驚きだ。是枝節がしっかり組み込まれていると感じた。日本人はもちろん、海外でもかなり好意的に受け取られてしかるべき作品だろう。(これ、原案までも是枝なのか、どこにも書かれていない。)

それと、やはりドヌーヴを主役に据えたことで、ほとんど成功していると言っていいだろう。ちょっと他の役者では持て余しかねない役どころ。割と最近、「ロッフフォールの恋人たち」を見ていたので、彼女の落差ぶりには驚きしかない。ジャンヌ・モローも晩年まで出演していたが、それとは違う意味での歳の取り方だ。目ぢからの凄さよ!

大女優に一人、ジュリエット・ビノーシュも霞かねないドヌーヴの存在感、まざまざ!!イーサン・ホークは気の毒なほど軽い役になってしまった。孫娘の子役が見せる。映画撮影シーンに登場する新人マノン・クラベル、どうということのない女優。声の低さが異様。イタリア人女優、マヤ・サンサが出演していたことをエンドロールで知るが、どこに出てたか思い出せない。

親子、家族のあり方について、是枝はさんざんこれまで撮って来ているが、とうとう海外版まで作ってしまった観あり。それほど考え込まないで済む、比較的軽い感じの作品に仕上がっている。

蛇足だが、パリ近郊を走る車から外を眺めていたファビエンヌが「あれは、ミシェル・モルガンが住んでた屋敷よ」。続いて、「そう言えば、イニシャルが重なる女優って、名女優が多いのよね。他にもダニエル・ダリューでしょ、グレタ・ガルボでしょ、それから・・・ああ、アヌーク・エイーメもそう。」すると、娘が「ブリジッド・バルドーも」と付け加えると意味ありげに、「あれは、ちょっとね」という表情に。監督のロジェ・ヴァディム絡みで、ドヌーヴとバルドーは微妙な関係にあったことを暗にさしているようで、面白かった。

ついでに、このタイトル「真実」は、そのブリジッド・バルドー主演、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督で1960年に公開されていて、原題も同じLA VERITÉである。

#64 画像はIMDbから