151028 原題:CLOUDS OF SILS MARIA(SILS MARIAはスイス山岳地帯にある村の名前)脚本・監督:オリヴィエ・アサイヤス
円熟の女優、マリア・エンダース(ジュリエット・ビノーシュ)が、かつて演じた舞台劇のリメイクでの出演をオファーされるが、即快諾とはいかない。もう20年も前に演じたシグリットという名の役に、とことん惚れこみ、極めて高い評価も受けたのだが、今オファーされている役は、シグリットの相手役、しかもシグリットにいいようにあしらわれ、追い詰められるという難しくも、また寂しい役どころなのだから。
結局、受けることにして、秘書のヴァレンティン(クリステン・スチュアート)相手に、アルプス山中に閉じこもって稽古を始めるのだったが、やはり稽古を積めば積むほど、のめり込めないのをどうすることもできない。
秘書で、稽古相手のヴァレンティンは精一杯務めてくれるし、申し分がないのだが、時に彼女のストレートな物言いにイライラする自分を制御できず、ついヴァレンティーナに当たってしまう。どこかで、ヴァレンティーナの若さに嫉妬もしているほど、日に日に老いを感じてもいる。ヴァレンティンにしてみれば、心から尊敬もし、目標とも思えるマリアだったが、ついていけないと思い始める。
そしてある日、二人で、その戯曲のタイトルにもなっている「マローヤの蛇」と称する自然現象(雲が谷間に流れ込んでくる様子が、まるで白蛇のごとし)を見に出かけるが、気づくと、ヴァレンティンの姿が忽然と消えていたのだった。それから何週間後、ロンドンで、「マローヤの蛇」の初日を迎えるのだったが・・・。
リメイク版でシグリットを演じるクロエ・グレース・モレッツ。出番は少ないが、結構印象に残る。しかし、なんといっても、ビノーシュ以上に素晴らしいのがクリステン・スチュアート!彼女の出た作品は結構見ているが、いやはやこんな立派な女優になろうとは!
尤も、この役、彼女の代理人の手違いで、危うくミア・ワシコウスカに持って行かれるところだったが、なんとか自ら取り戻したというから、彼女なりに、この役には執念を燃やしていたのだろう。
ちなみに、監督アサイヤスに、この作品の映画化を勧めたのはビノーシュだったとか。実は30年前に、アサイヤスが共同で脚本を書いた「ランデブー」(監督はアンドレ・テシネ、共演はランベール・ウィルソン、ジャン=ルイ・トランティニャン)に彼女が出演し、この作品がきっかけで一躍一流女優の仲間入りを果たしたという因縁が、二人の間にあったことは、本作が世に出る伏線になったのかも。
#83 画像はIMdb、およびALLCINEMA on lineから