ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「LIVING」@AmazonPrime

240426 1年前に公開された作品がもう配信で見られます。ご存知、KUROSAWAの名作「生きる」がモデルです。それをKazuo Ishiguroが同時代、つまり1953年のロンドンに移し替えました。

こんな手品のような技があるんです。そこには違和感、ほぼありません。「生きる」を見ていない英国人が本作を見て、どんな感じがするのか大変興味があります。

やはり世界の黒澤 明、傑作の「羅生門」、「七人の侍」、そしてこの「生きる」、いずれも外国でリメイクされています。他にも「用心棒」なども「荒野の用心棒」としてリメイクされていますから、いかに彼の作り上げた世界が世界共通の理念や興味のもとに作られてかという証左でしょうか。

サムライものと違って、現代劇で超真面目な内容で、娯楽要素はない作品だけに、Kazuo Ishiguroも苦労したのではないでしょうか。余命9ヶ月と宣告された胃がんの主人公、役所ではMr.ゾンビとあだ名されるほどで、存在感ゼロみたいなタイプです。余命宣告されたことで、人生を見直し、今まで気づかなかったことに初めて気がつきます。

主婦たちがなんども陳情に来ていた子供用の小さな公園作りに奔走、ついに完成させます。雪降るその公園で、ある晩、ブランコに揺られながら、母親がよく歌っていた古いスコットランド民謡をぼそぼそ歌いながら・・・。

主演のビル・ナイがさすがの演技です。オリジナルの志村喬も素晴らしかったのですが、ビル・ナイも負けていませんね。彼なしではこの作品はうまれなかったかも知れません。

「ヴェラ〜信念の女警部〜」@AmazonPrime

240424 Vera 英 2012 TV ドラマシリーズ

相も変わらず、またまた英国製の刑事モノを見ましたが、全部で55話もあるのに、シーズン1の第2話で挫折しました。面白かったのですが、展開が込み入っていて、登場人物の相関関係がなかなか頭に入らず、こりゃ愚亭には無理って判断した次第。もうちょっと分かりやすい脚本でないと、なんども戻って見直すようでは、早めにやめた方がいいということです。この辺、やはり高齢化が原因かも知れません。

女警部を主人公にしたテレビ・ドラマ、以前にも見ていて、特に違和感はないのです。このヴェラという主人公も、ごらんのようなぽっちゃり型の可愛らしい警部さんで、そこが「売り」なんですね。とりわけチャーミングな笑顔を向けられると、ついつい余計なことまでしゃべっちゃうという、この手で次々に事件を解決するという寸法です。

補佐に回る若手の刑事がイケメンで、これで女性のファンをつかもうって算段だと思います。おばさん警部ですから、そんなに残忍な殺人事件は扱いません。ですから、どちらかと言えば女性向きの刑事ものと言えるでしょうか。いずれ気が向いたら、続編から見始めることになるでしょう。とりあえず、一旦やめておきます。

舞台は英国の中でも荒涼とした雰囲気がただようノーサンバーランド州という、ヨークよりさらに北、スコットランド寄りの州なんで、北海に面した海岸はかなり風も強く冬は相当厳しそうです。そういう土地柄で起きる事件ですから、いかにも寒々しく、なにやら北欧のドラマを見ているようです。英語もこのあたりだとかなり訛りがきつく、スコットランド訛りに近いです。

5/25「デイダミーア」プレイベント@めぐろパーシモンホール(小)

240423

本公演(5/25)に備えての”予告編”が開催されました。千円ポッキリなんで「都立大学」まで行ってきました。日本ではほとんど上演機会のないオペラなので、やはり二期会としても、こうした活動には力を入れざるを得ない様子です。

ヘンデル、最晩年のオペラで、1741年製。そして翌年、「メサイア」が作曲されたというわけです。もちろん、その時は母国ドイツではなく、移住先(最終的には帰化した)の英国でしたので、英語による作品となりました。

トークショーは演出家の中村 蓉さん(まだ30代!)と一緒に、Mo.鈴木秀美が解説していきました。オペラの歴史から説きおこして、なかなか興味深いお話が聞けました。世界最古のオペラとされているのはギリシャ人、ヤコポ・ペーリの「ダフネ」ということで、これが1597年!ただ、楽譜が喪失していて、公式には同じ作曲家による「エウリディーチェ」(1600)だそうです。そのあとは、モンテヴェルディが活躍した時代になります。

中村 蓉さんは演出家の立場から苦労話や、もちろん筋立てについても語っていました。薄いベージュのパンツに白Tシャツ、上にデニムシャツを羽織って、さすがちょっとした動きも軽快で、いくつかの場面もフリ入りで解説してくれました。

その後、アキッレ役、デイダミーア役、2組4人のソプラノが登場、上記4曲を順に一人づつご披露。まだ本番までひと月以上あるので、仕上がっているところまでは行っていませんが、若い美声をたっぷりと会場いっぱいにふりまいてくれました。

ついでに、Mo.鈴木は本職はチェリストですが、近年、こうして指揮にも意欲を見せており、この一族(兄はBCJ鈴木雅明、その息子の鈴木 優、夫人でソプラノ歌手鈴木美登里)の活躍は目を見張るものがあります。

向かって左からチェンバロの上尾直毅、ソプラノは順に
清水理沙、七澤結、(Mo.鈴木)、(中村 蓉)、渡辺智美、栗本 萌

 

カヴァレリアとパリアッチ@ティアラ江東

240421

ローラ役の田仲由佳さんからご案内をいただき、行ってきました。期待に違わず、というか期待以上に素晴らしい舞台でした。愚亭も結構あちこちのアマチュア合唱団のこうしたオペラ公演に足を運びますが、荒川、杉並、立川といった市民レベルの公演としては、江東区もすこぶるレベルが高いと思いました。

長年、このシリーズは土師雅人さんが指導してらして、今回もそうした努力が見事に結実していました。オケも優秀ですが、合唱もよく頑張られていました。男声も充実しているし、バランスよく響いていて、小気味よかったです。混声合唱をやっている身からすれば、実に羨ましく思いました。

2日公演でしたが、土師さんはトゥリッドゥもカニオも日は違いますが、両方の主役を演じられて、失礼ながらもうそれほどお若くはないので、さぞ心身ともに消耗されたこととお察ししています。

さて、ローラの田仲さん、コロナもあったりで、久しぶりに聞かせてもらいましたが、相変わらず歌もですが、長身を生かした演技もお上手で、引き込まれました。アルフィオの井上雅人さん、以前は結構何度もお聞きしていましたがこのところ、聴く機会がなく、大変懐かしく拝見していました。安定感抜群のバリトンです。

それと、舞台が限られた予算の中で大変スタイリッシュに作られていて、驚きました。上手には花々をまとった住居が、下手には小ぶりながら教会が描かれています。その前にはこれも小さな洗礼用の噴水、中央にはマリア蔵がすこし高い位置に置かれていて、デザインされた方々のセンスが感じられました。

ついでに、2階のバルコニー席でのトランペット演奏や、合唱小グループの演唱など、工夫されていました。低予算でも衣装には随分気を使われていたようでした。やはり、どちらの部隊も雰囲気を出すにはそれなりの衣装は欠かせません。

1時間ずつかと勘違いしていましたが、正味2時間半でした。終演後、出演者がロビーに出てくださり、ファンたちと交換ができたのはうれしいことでした。

カヴァレリアのカーテンコール

こちらは道化師 センターはMo.諸遊耕史

 

「TOKYO MER~走る緊急救命室~」@ AmazonPrime

240420テレビで散々話題になったドラマの劇場版です。

超話題作につき、下手な解説不要かと。それの劇場版を次の作品と提示され、そのままずるずると見ることに。なかなかよくできています。医療現場のことをかなり丁寧に研究してドラマに仕立てています。小気味の良い演技で、好感しました。ま、実際にはこうしたドラマのように上首尾には行かないはずと思いつつ、どんどんハマりますね。

横浜のランドマークタワーの上層階で発生した火災とそれに巻き込まれた人々の救出に決死の覚悟で乗り出すチームの悪戦苦闘ぶりを見事に描き切っています。高層ビルでの上階での火災となると、我々世代では、「タワーリング・インフェルノ」(米 1974年)をついイメージしてしまいます。これはサンフランシスコの地上550mという途方もない超高層ビルのてっぺんで、落成式での出火を扱ってました。