ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

野方WIZ フライデー・コンサート 第232回 Italian Night AMORE E CUORE イタリアを愛する三人が贈る情熱のカンツォーネ

180810 ミューザ川崎の終演時間が50分も押してしまい、京浜東北線ー山手線ー西武新宿線を乗り継いで野方へ。15分も遅れて到着。幸いなことに、歌仲間が席を取っておいてくれたので、曲の合間にうまく滑り込めた。

今日は、我が合唱団の指導者の一人、猪村浩之先生の舞台だから、仲間7人と駆けつけた。伴奏は令夫人でもある大坪由里、共演はソプラノで、モナコ在住の友佳子クスト平盛。(大仰な名前に聞こえるが、ピアニストであるイタリア人に嫁ぎ、モナコで優雅に暮らしている方。その昔、シャネルのピグマリオン・デイズ専属歌手に選出され、1年間、何度かシャネルでの演奏会を開催している)

猪村先生お得意のナンバーがズラリ。前半は歌曲中心、後半はカンツォーネ中心の構成。やはり後半は知名度の高いナンバーを並べているので、尻上がりに歓声と拍手が増大、最後のオー・ソレ・ミオの盛り上がりは凄かった。そして、アンコールでは、なんとさっきミューザ川崎で聞いたばかりのTIME TO SAY GOOD-BYE! 同じ日に2度同じアンコール曲を聴くとは、珍しい体験でした。

特筆すべきは、大坪由里のピアノの技、正直驚いた。伴奏ピアニストではなく、本格派のコンサートピアニストというべきか。華麗なタッチが正確無比な音を紡いでいくのには忘我である。

猪村先生は⬇︎でご覧の通り、イケメンでオシャレ、その上、人柄も素晴らしく、我が団では、特におばちゃんたちからの人気抜群で、先生がいるから歌い続けているという人、少なからず。

今日は、前半は黒ずくめで、下は多分レザーパンツ。顔面にたっぷり汗をかいていた。もう少し涼しげな装いでもよかったかも知れない。対する友佳子さんは真紅のドレス!

後半は一転、先生が上下白のスーツに、なんと真っ赤なローファー、揃いのチーフという、これは先生でないと着こなせない出で立ちだ。友佳子さんは、やや渋めのネイビーのドレス。

終演後、ロビーで我が合唱団員との記念撮影。

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華麗なツーショットと思ったら・・・目、瞑っちゃったよ。残念!こう言う時に限って1枚しか撮影していない!あーあ!

夕食、食べる間もなく駆けつけ、喉もカラカラで、さっそく一同、近くのイタリアンで一息ついた次第。

 

#45 文中一部敬称略

「フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2018 東京ニューシティ管弦楽団 センター争奪、灼熱のアリアバトル」

 

180810 なかなか面白い企画だし、お値段も手頃なのだが、客の入りはイマイチ。この猛暑の時期、あまり人は移動したくないのだろう。こちらも余りの暑さに、初めて自宅近くのバス停から1回乗り換えではあるが、会場近くのラゾナ川崎まで行ってみた。JRを使ういつものルートとほぼ同じ所要時間であり、しかも最後の区間は東京でないにもかかわらず、手元のシルバーパスが使えるのはありがたい!

出演者で、一番気になっていたのが土屋優子!さいきん評判が上がってきているようで、初めて生で聞く機会が訪れた。

前半、全員の演唱を聴いた上で、聴衆が投票し、1位者が最後の「乾杯の歌」をセンターで歌えるという、それだけのことなのだが、進行の朝岡 聡の巧みな話術で、会場を大いに盛り上げた。

出演者の売り込みのチラシがプログラムに挟み込まれていた。(順不同)

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そして演目がこちら。


指揮:曽我大介
ソプラノ:高橋 維
ソプラノ:土屋優子
メゾ・ソプラノ:野田千恵子
メゾ・ソプラノ:高野百合絵
テノール:芹澤佳通
バリトン:吉川健一
司会:朝岡 聡
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲 

【前半アリアバトルの歌唱順は
 プレトーク中の抽選で決まります】
ヴェルディ
 歌劇「椿姫」から“ああ、そはかの人か~花から花へ”(高橋)
プッチーニ
 歌劇「蝶々夫人」から “ある晴れた日に”(土屋)
ロッシーニ
 歌劇「タンクレーディ」から“この胸の高鳴りに”(野田)
ロッシーニ
 歌劇「セヴィリアの理髪師」から “今の歌声は”(高野)
プッチーニ
 歌劇「トゥーランドット」から“誰も寝てはならぬ”(芹澤)
ジョルダーノ:
 歌劇「アンドレア・シェニエ」から“祖国を裏切る者”(吉川)

ロッシーニ
 歌劇「セビリアの理髪師」序曲
ロッシーニ
 歌劇「セビリアの理髪師 」から
 ロジーナとフィガロの二重唱
 “それじゃ私だわ・・・嘘じゃないわね” (高野/吉川)
プッチーニ
 歌劇「ラ・ボエーム」からロドルフォとミミの二重唱
 “おお麗しの乙女よ” (芹澤/土屋)
マスカーニ:
 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」間奏曲
プッチーニ
 歌劇「蝶々夫人蝶々夫人とスズキの二重唱
 "桜の枝を揺さぶって" (土屋/野田)
ドニゼッティ
 歌劇「ドン・パスクワーレ」から
 ノリーナとドン・パスクワーレ の二重唱
 “お嬢様、そんなに急いでどこへ” (高橋/吉川)
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」序曲
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」 第三幕 四重唱
 ”美しい恋の乙女よ” (高橋/野田/芹澤/吉川)

エストロ曽我はこんなことを語っている。

もちろん、「争奪」「バトル」とはいっても、「ガチの争い」ではない。
「どちらかといえばお楽しみですね。出演者は私も共演したことのある、若手ながら指折りの実力を持った歌手のみなさんです。みなさん楽しんで参加してくださっているようです。意気込みなどは、当日プログラムとともに配付される『選挙公報』をご覧ください。
 出演者全員が声のタイプのまったく異なる、カラーの違う歌手のみなさんです。それぞれの希望曲数曲の中から選曲して、結果として、コンサートとして聴いてもとてもバランスのよいプログラムになっていますので、人間の声のさまざまな魅力、イタリア・オペラの世界の奥深さを楽しんでいただけると思います」

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この人、ひょうきんで親しみやすい方らしく、進行とのやりとりの間合いの取り方もうまいし、「乾杯の歌」では自らテノール(?)の喉も披露して会場から盛んな拍手が。

結局、投票では私も投じた土屋優子が1位ということで、優勝者の⬇︎たすきを掛け、堂々、真ん中で歌った。

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アンコールには、自分の所属合唱団も昨年の定演で歌った"TIME TO SAY GOOD-BYE"、これはまた一段と素晴らしかった。

確かに同じ声部でも、種類が何層にも別れるので、そこが聞く側の興味を惹きつけるし、歌う側もそれを意識して慎重の上にも慎重に選曲しないと、「この人、こんなはずじゃないんだけどなぁ・・・」などということが往々にしてあるみたい。

多分、一位はこの人ではないかと思っていたのがソプラノの高橋 維。人気・実力ともに急上昇中。前半、つまり投票対象の選曲は「椿姫」から1幕のアリア。無難に歌い、最後のEsも余裕で出し切って、やんやの喝采とブラーヴァ!は、まあ想定内。でも、ヴィオレッタは、多分、もう少しスピント系の色合いが求められるような気がしてならない。もっと彼女の本来の持ち味が出せる曲を選んで欲しかった。もしかして、イタリアものよりドイツものの方が合っているのかも。

その点、土屋優子のマダム・バタフライは、ほぼぴったりとはまっていたと思う。どちらかと言うと、沈み込むような高音というとヘンかも知れないが、重みのある高音に特徴を感じた。

高野百合絵、学院生の現役というから驚く。舞台姿が堂々としていて、すでにキャリアが積んでいるように見える。Una Voce、アジリタも軽快でとてもよかった!最後の最後に、チラッと「アレ?」という感じがしたのは自分だけかな。微かにズレのようなものが。

野田千恵子、中音の響きに期待したのだが・・・これも多少選曲に問題あったのかも。でも、最後に歌ったリゴレットの四重唱でのマッダレーナでは息を吹き返したようだった。それにしても、かなり小柄だから、オペラ本公演の舞台に乗るには、申し訳ないけど、ちょっとばかりしんどいかも知れない。

芹澤佳通、大器の風格だが、まだまだ原石だ。ちょっとこもった、というかソフトなテノールで、これは磨き甲斐がある。ネスドルは、やや期待はずれ。でも、いいものは間違いなく持っている。

吉川健一、10年ほど前からもうなんども聞かせてもらっていて、実力のほどもよく知っている。なんでも器用にこなすタイプだろう。人物も明るく社交的で、口八丁手八丁という印象。ただ、今日の演目は、どうだろう。この人に合っていたのだろうか。「アンドレア・シェニエ」のこの役は、この人のような明るい感じのバリトンでは、訴えきれない気がする。(なんたって、この曲、あのエットレ・バスティアニーニで聴いちゃっているから、それも生で)もっと荒々しい、ごっつい声で歌ってこそではないかな。

つい調子に乗ってえらそうに書いてしまったが、さすがマエストロが厳選した人たちだ。ヴェテランから新人まで一堂に会しての歌合戦、たっぷり楽しませもらいました。

#44 文中敬称略

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2重螺旋の恋人

180809 L'Amant Double(2重の恋人)仏 107分 脚本・監督:フランソワ・オゾン

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いかにもオゾンが撮りそうな作品。心理描写と現実描写が複雑に入り組んで、見るものを手玉に取り、騙し、そして放り出す。あとはご随意にどうぞ、と言わんばかり。

もうその手には乗ってやらないよ。結局、描かれたほとんどは主人公であるクロエの妄想の産物として眺めれば、最後の辻褄が合ってくると言うのが自分の見立てだが、受け止め方はそれぞれだろう。

頻繁に出てくる飼い猫の存在も、本作のキーポイントかも。また精神科医の待合室でクロエが植木鉢に手を伸ばして、土を指先で確認する仕草が二度も出てくるが、オゾンはこれで何かを表現しているのかも。

それにしても過激な描写が随所に。また性描写がいつになくしつこくて、いい加減うんざりする。何もそこまで、という感じだ。そのことがそんなに大事なのか。何かフロイト的な展開という含意でもあるのか。終盤、「エイリアン」そっくりの場面が。ここなどはグロ!

主演のマリーヌ・ヴァクト、美形なれど個性なし。ということで、自分にはまったく魅力なしに映った。

双子の相手役、ジェレミー・レニエは、ヒット作”シャンソン・ポピュレール”で一時代を築いたシャンソン歌手、クロード・フランソワの伝記映画「最後のマイウェイ」で見ているが、本作でもフランソワにそっくり!

⬇︎もう一つの興味はジャクリーヌ・ビセット。一時代、それなりの美貌で売った彼女だが、こう老いさらばえていては、言葉がない。女優の場合は、老け役に徹するのは至難と思わざるを得ない。初めて見たのはオードリー・ヘップバーンの「いつも二人で」。その時は23歳、今は74歳だもの。

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この邦題はなかなかで、原題をはるかに凌ぐ。二重螺旋がDNAを示していることは明白。また、劇中、螺旋階段が出てくる。ツッコミどころが多く、これまでのオゾンの作品の中では、それほど上位には来ないだろう。

#59 画像はIMDbから

「ヒトラーを欺いた黄色い星」

180807 DIE UNSICHTBAREN(見えざる者たち)独 111分 監督:クラウス・レーフレ

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スタッフ・キャスト陣に名前を知っている人物、皆無。ドイツでどの程度評価された作品なのか不明。

600万人もがナチスによって殺されたとされるユダヤ人だが、1943年6月、宣伝相ゲッベルスによりベルリンからユダヤ人一掃作戦に抵抗を続け、隠れ逃れたユダヤ人が7,000人もいたという事実は、衝撃的!

ただ、戦後生き延びられたのはその2割の1,500人に過ぎない。ユダヤ人の中にも、それなりの知恵と大いなる勇気、強い才覚を持ち、なおかつ運にも恵まれた人たちだけがやっとたどり着けた運命だ。

同時に、発覚すれば命がないことを承知で、こうしたユダヤ人たちを自宅などに匿った勇気あるドイツ人が多数いた事実も感動的だ。

隠れ家で、日中物音を立てずにひっそりと過ごすシーンは、「アンネの日記」の一場面を想起させる。

映画は、四人の生存者のモノローグを中心に組み立てられている。要所要所に実写フィルムをはさみ、再現ドラマ風に展開される。激しい銃撃や派手なアクションもなし。特別なヒーローも存在せず、普通の人々がドキュメンタリー・タッチで描かれるのみ。

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⬆︎街を歩いていると、ナチスの私服監視員から黄色い星の縫い付け方にイチャモンをつけられる。ちなみに彼の父親はドイツ人で、母親はユダヤ人だが、ドイツ人の配偶者ということで、ユダヤ人狩りの対象外。唯一、息子だけがユダヤ人として追われる身。これも随分気の毒な話だ。

1945年4月に入ると、いよいよ赤軍がベルリン市内への侵攻を開始。勢いづく隠れユダヤ人たち。防空壕から出てきた二人のユダヤ人青年、たちまち赤軍兵士に囲まれ、ドイツ人と疑われて撃たれそうになる。必死にユダヤ人と言い張ると、銃口を向けたままユダヤ教祈りの言葉を唱えてみろと言われ、手を挙げたまま、祈りの言葉を口にすると、表情を一変、銃を下げ、二人を固く抱擁する兵士。彼もユダヤ系ロシア人というわけで、これがなかなか感動的な終幕部の1シーン。

おそらくかなり低予算で作られたはずだが、うまく作ってある。画面にみなぎる並外れた緊迫感で、見終わって、少々お疲れ気味。

#58 画像はIMDbから。

フェスタサマーミューザ 2018

180803 今年もこの季節になった。毎年5回は来ていたのだが、、昨年から3回に。自分にとっては今日が初日に当たる。何と言っても、神尾真由子だ!

 

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ミューザ川崎に頻繁に来るわりに、カナフィルを聴く機会はあまりない。このマエストロは初めてだ。34歳という新進。きびきびとした気持ちの良い演奏スタイルで、これは特に女性ファンから好感持たれるだろう。

サン=サーンスは、普段あまり聴く機会がない。1曲目、「サムソンとデリラ」からのバッカナール、快調な演奏だった。バッカナールは、先日も「椿姫」第3幕で歌ったが、バッカスに由来する言葉で酒宴とか、馬鹿騒ぎのこと。だいたい、賑やかに騒々しく演奏して、あっという間に終わってしまうみたいだ。

 

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今日の目玉はなんと言っても神尾真由子!5,6年前にもここの舞台で聴いているが、小生意気な雰囲気をまとった真実、天才肌という弾き方をしていたのを鮮明に覚えているが、その後ロシア人ピアニストと結婚、出産も経験し、そんなことも手伝ってか、グッと円熟味を増した印象。演奏態度も堂々と落ち着いており、まるで別人の様。

楽器は、サントリーから貸与されたストラディヴァリウス(1727)を使用していたが、その後、拠点を海外に移したことで、現在はグァリネリゥス・デル・ジェス(1735)を使っている。

3曲目の交響曲3番オルガン付きという、わりに珍しい演目を聴いた。オルガン付きとなれば、演奏会場が限られる。その点、ミューザ川崎はうってつけである。オルガンが鳴り始めるのは中盤も過ぎた頃、最初は静かに和音を鳴らしているだけだが、終盤に大音響となり、ホールいっぱいの聴衆もちょっと驚いた様子だった。

今日は演奏家も演目も素晴らしく、フェスタの時期は値段も手ごろとなるので、これまで見たこともないような超満員。5階席など、パイプオルガンのすぐ脇にまで聴衆がいる光景は初めてだ。当然、休憩中のロビーも人が溢れ、また男子トイレでも女子並みに長蛇の列ができるなど、えらい騒ぎだ。ばったり会った友人も部類のコーヒー好きで、幕間を楽しみにしていたようだが、あまりの混雑に呆然とするのみ。

ところで、カナフィル名物というと差し障りがありそうだが、コンマス石田泰尚、イガグリ頭がトレードマーク。そこに剃り込みを入れているという異色の存在!普段はサングラスまでかけるというから、組長と呼ばれるというのもむべなるかな。無愛想そのもので、にこりともしない。まあ一種の照れ隠しなんだろうが、最後にマエストロとなにやら喋っていて、一瞬、笑顔が。

#43 (文中敬称略)