ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

東京都庭園美術館へ

パスポート更新の申請手続き、意外に簡単に終わったので、目黒下車でこの美術館へ。姉が知らせてくれた有元利夫展を覗いた。

目黒駅からさえぎるもののない中を歩いて7,8分。庭園美術館が近づくと鬱蒼とした森の端をかすめるようにして、入口に入るが、ほんの僅かな区間ながら、蝉しぐれが心地よい。

言わずと知れた朝香宮邸を美術館にしたものだが、正面玄関にはあのルネ・ラリックの手掛けたガラスの女神像とアンリ・ラパン作のアール・デコ様式のモザイク床が迎えてくれると言う何とも贅沢な気分が味わえる。
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恥ずかしながら有元利夫に関する知識なし。姉に呆れられたのだが、事実だからどうしようもない。

この人、1946年生まれで、1985年に38歳で没している。惜しいことをしたものだ。芸術家というのは節目ごとに画風や作風が変化し、変化しながら大成するピカソのような大天才もいるが、ある時期を境に才能が枯渇するタイプも少なくないから、難しいところだ。最近展覧会が開かれたばかりのタマラ・ドゥ・レンピッカなどがその典型だが、若き日の自作を模写するような晩年を送るというのも、ある意味悲惨である。

有元はどのタイプだったのだろう。
f:id:niba-036:20100519170152j:image:left彼はバロック音楽、中でもヴィヴァルディが大好きだったとか。音楽的要素を自作にふんだんに取り込んでいるようだ。顔は中性、ま、どちらかと言うと女性なのだろうが、ピカソの作品に見られるような大きな鼻と立体的な造作、太い腕、デフォルメされた全身。若き日にイタリアを旅して、ピエロ・デッラ・フランチェスカに陶酔したとかで、壁画風の質感と色調を多用しているのが分かる。中にはマグリットを彷彿とさせる絵柄も少なくない。要するに部分、誰かの作品からヒントを得ていることは確実だ。それでいながら、有元独自の世界を構築しているところに価値がある。

油彩のほか、エッチング、石版、陶芸、木彫、乾漆などにも手を出して、いろいろ実験している姿が面白い。音楽の方も、自らリコーダーを吹いていたという。お手製リコーダー収納箱の展示もあった。
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