120830 東京文化会館大ホール。
2次予選を通過した4名による決戦。大ホールで、しかもフルオケ付きだから、この舞台に立てる歌手はまさに夢見心地ではないか。
いつもより多少前方に陣取る。今回もエスイロホ氏と一緒だ。トップバッター、バリトンの寺田功治さんが多少緊張した面持ちで登場。そりゃそうだろう。緊張しない方がおかしい。老けて見えるが、まだ30前。尤もこの方、今回で3度目の挑戦となる。果たして3度目の正直となるか。バリトンでもテノールに近い音域とお見受けした。
2番手は若い頃のパヴァロッティを一回りほど小さくしたようなぽっちゃり型の宮里直樹さん。まだ現役の学生で、25歳。身体同様、圧倒的な発声で、ほとばしるエネルギーを持て余しているような風情。
休憩後、初めて女性歌手が登場。紅一点本選に残ったのは嘉目真木子さん。既に二期会本公演には何度も出演しており、若いのに実績が素晴らしい。今日の選曲も、かなり難曲ばかりという印象で、技巧派を印象づけている。
そして、最後に登場したのはカウンター・テナー、藤木大地さん。二次予選でも感じたが、すごく舞台慣れした印象を与える歌手である。普通のテナーからカウンター・テナーに転向してまだ1年半しか経過していないが、既に国際舞台に立っているから凄い。
審査に手間取ったとかで、審査結果発表は45分後となった。その間、エスイロホ氏と毎度のように予測を立てていたが、結果は・・・
<声楽部門>
第1位 該当者なし
第2位 宮里 直樹(テノール)
第2位 嘉目 真木子(ソプラノ)
第3位 該当者なし
入 選 寺田 功治(バリトン)
入 選 藤木 大地(アルト)
★聴衆賞
宮里 直樹(テノール)
という、意表を突くものだった。
声楽部門で一位なしというのは第5回のみ。その時は2位が森美代子さん(聴衆賞も)3位吉川日奈子さんだった。吉川さんは現在ドイツで活躍中。
ま、でも我々の予測も当たらずとも遠からずで、さほど耳に狂いがないことが分かり嬉しいね、やはり。
東京文化会館館長である指揮者のコバケンこと小林研一郎氏から表彰状が授与されたが、表彰状を読むことなく、自分の気持ちをストレートに受賞者に伝えていたのがいつもと違う光景。これはこれでよかったように思う。
その後、審査委員を代表する形で大島幾雄氏から講評があった。この暑い中で、コンディション作りがいかに大変なことかと、まずは出演者へのねぎらいの言葉があった。やはりカウンター・テナーについては、彼らをもってしても戸惑いがあって、悩み抜いた様子。全体になかなか歯切れのよい講評だった。
#62