ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ある海辺の詩人 ー小さなヴェニスでー」

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130412 原題:IO SONO LI(私はリー)昨年のイタリア映画祭出品作品で、「シュン・リーと詩人」というタイトルだった。イタリア映画祭の場合、出品作がその後一般公開されるケースは稀だから、貴重な機会である。

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監督のアンドレア・セグレはこれまでドキュメンタリー畑を歩いた人物。主演のチャオ・タオ、中国ではかなりの人気女優らしい。また旧ユーゴスラヴィアからの移民漁師を演じるラデ・シェルベッジャ、どこかで見た顔と思ったら、最近見たリアム・ニーソン主演作「96時間・リベンジ」で、極悪役を演じたクロアチア人俳優。

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主人公のシュン・リー(チャオ・タオ)は、故郷の福州へ一人息子を残したまま、イタリアへ出稼ぎに。何としても一人息子を呼び寄せたい一心だから、少々のことは我慢しながらも、蛇頭の下で、不法労働に明け暮れる日々。ある日、繊維関係の工場勤務からはずされ、ヴェニス・ラグーナ南端にある漁村キオッジャにあるバーで働くことに。慣れぬ仕事に、片言のイタリア語では、なかなか思うような働きが出来ない。

 

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そんなバーに集まる地元の荒くれ漁師たちの中に、ハンディを負いながらも懸命に働く彼女に同情を寄せる客も現れ、次第にこの老いた漁師ベーピ(シェルベッジャ)と心を通わせるようになる。 

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実はベーピも旧ユーゴスラヴィアからの移民という、いわば似た者同士。メストレ(ヴェニスの対岸の都市)に住む息子夫婦から、しきりに一緒に住もうと持ちかけられているが、今の生活から離れる気持ちは毛頭ない。そんな中で知り合ったシュン・リーには、何か特別な感情を抱き始めるのだった。

 

舞台になるキオッジャは、その昔、学生時代にヒッチハイクで立ち寄ったことがあるが、何の変哲もない平凡な町。ヴェニスに近いというだけで、町の産業は漁業あるのみ。そんな事情もあり、この邦題決定には、随分苦労の跡が偲ばれる。わざわざ「・・・~小さなヴェニスで~」としたあたりに。

 

#27 画像はALLCINEMA on lineから