160928 141分とかなり長い。原作:吉田修一、脚本・監督:李相日 ついでに主演の一人、妻夫木聡を加えると、「悪人」(2010)と同じ組み合わせ。
自分の中では、「悪人」は、あまり感心しなかったが、本作は凄いと思う。原作を読んでいないから、うっかりしたことは言えないが、脚本の冴えが素晴らしい気がする。とにかく伏線の張りかたが見事すぎる。
⬆︎千葉編は渡辺謙の父親と宮崎あおいの娘。宮崎の演技には圧倒されるしかない。
下敷きになったのが、紛れもなく、2007年の英国人リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件であり、犯人市橋達也がモデルなのは明白。そう言えば、登場する犯人の整形前・後のモンタージュ写真も当時のものによく似ている。
⬆︎これが当時日本中に公開されたそのモンタージュ写真
冒頭は、八王子で発生した夫婦惨殺現場を二人の刑事(ピエール瀧と三浦貴大)が現場検証する場面。あまりに凄惨で、血の匂いが客席まで漂ってきそう。(しかし、その後、三つの異なるストーリーが展開していくと、冒頭のこの事件のことは忘れてしまうほど。)
それから一転して、千葉、東京、沖縄での三つの話が、かなり早いテンポで入れ替わり立ち替わり展開される。そこに、犯人ではないかと思わせる人物がそれぞれ配置されていて、アイツかな、いやいやコイツだろう、とずーっと緊張が持続させ、観客を焦らせまくる。
⬆︎東京編は妻夫木聡と綾野剛という二大人気俳優がゲイという間柄で登場。二人の絡みのシーンはあまり見たくない種類のもの。それにしても、俳優稼業も大変だ。
沖縄編の主人公、森山未來が、顔付きは一番”犯人”に似ている。多分、意識的に監督かキャスティング担当が探したはずだ。
実際の事件の顛末は知っていたから、当方はかなり自信を持って沖縄編に注目していたが、巧みな脚本で、140分、ダレる暇なし。実際に起きた事件に着想するのは珍しいことじゃないどころが、ごく普通だが、それをここまで膨らませるテクニックが素晴らしい!
ところで、タイトルにもなっていて、冒頭の殺人現場と、沖縄の無人島暮らしのねぐらの壁にもとんがった文字で書かれていたこの”怒り”が、どこから来ているのか、一切説明がないから、見るものが勝手に想像するしかない。それもまた楽しい。
#72 画像はALLCINEMA on lineから