ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ウルフ・ホール」@amazon prime

201224 WOLF HALL 2015 英 

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マーク・ライランスが演じるトーマス・モアが主人公。彼の視線で描くヘンリー18世モノ。アン・ブリンの処刑で終わるので、やや物足りなさが。それでも、きわめて重厚な歴史大作になっており、宮殿の内外(どこの城で撮影したのだろう)シーンの素晴らしさ、調度・備品のリアルさなど、どこをとっても見応えは十分。特に、マーク・ライランスの演技には引き込まれる。撮影もすばらしい。ひとつひとつが絵画作品、それも名画のような印象を与えて、見事である。

この作品を見るきっかけは前に見た「ザ・クラウン」でのクレア・フォイに大いに魅せられたからである。ここでは、エリザベス2世の遠い先祖でもあるアン・ブリンを嫌味たっぷりに演じていて、かなり違った印象を与える。すなわち、演技力。

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こういう格好をさせると断然輝かしいクレア・フォイ

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処刑シーンでこのシリーズは幕が下りる。

先のクィーン、キャサリンに男子が生まれなかったことで、これを離婚して侍女に過ぎなかったアン・ブリンに手をつけ、正式に嫁にしようとするが、時のローマ法皇クレメンテ7世が頑としてこれを受け付けない。業をにやしたヘンリーは勝手に英国国教会を創設して、ローマとは縁切り。しばらくすると、晴れて一緒になったアン・ブリンに不義の疑いが。というより、やはり男子が生まれないのは表向きで、実際のところは次に目をつけたジェーン・シーモアと一緒になりたいだけという、ったくどうしようもない国王。

そういうところを諌め続けた大法官トーマス・モアを文字通り首にして、元側近だったウルジー卿もローマ法皇と折り合いがつけられないと言う理由で遠ざけ、その彼を慕っていたトーマス・クロムウェルを手なずける。そのクロムウェル、当初は慈悲深く、教養人として描かれるが、徐々に本性を顕し、恐怖の存在となっていく過程を、マーク・ライランスが確かな演技で、見事に表現する。

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こう言う相関図がないとなかなか理解しにくい当時の王室と側近たち

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ハンス・ホルバインが描いたヘンリー8世像。ご覧の通りの頭でっかち。デイミアン・ルイスのヘンリーはかなりかっこういい。

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ジョナサン・プライスが演じたウルジー卿は、前半1/3だけの登場。もう少し見たかったが。

アン・ブリンは、古くはジュヌヴィエーヴ・ビジョルド主演「1000日のアン」(1969)や、ポール・スコフィールドがトマス・モアを演じた「我が命つきるとも」(1966)、最近ではナタリー・ポートマンがアン役の「ブーリン家の姉妹」(2008)など、多数の映画やドラマで描かれ続けているが、本作のアンは、とんでも気が強く、また権謀術数に長けた女として描かれていていささかふてぶてしく映るが、さすがに最後のシーンは辛く悲しいものだった。