ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ローズの秘密の頁」

201229 THE SECRET SCRIPTURE (秘密の聖書)製作(共)・脚本(共)・監督:ジム・シェリダンアイルランド、ダブリン生まれの72歳、「父の祈りを」'93)

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主役ローズの若い時代をルーニー・マーラ(米国人)、40年後の現在をヴァネッサ・レッドグレーブ(英国人)が演じている。ローズはベルファスト北アイルランド)出身だが、一時はアイルランドのスライゴ(Sligo)で叔母が経営するカフェの女給を。しかし、ある事件以来、40年もロスコモンの精神科の施設に収監された状態。理由は、我が子殺し。だがこれは冤罪。ずーっと無実を主張し続けているが、身の潔白を証明することができない環境。

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今、やっと彼女の境遇に異常とも言える関心を示す医者(エリック・バナ)が登場。老境のローズに寄り添い、暗く深い闇に沈んだ真実をじっくりと解き明かし、奇跡のエンディングへと導く。その手掛かりになったのはローズがずーっと聖書(Scripture)に密かに書き綴っていた日記やメモであった。

アイルランドと、連合王国の一部である北アイルランドは今もなお多くの問題を抱えているが、その歴史をある程度知っておいた方が、展開が分かりやすい。根深い亀裂は主に宗教問題。名匠デイビット・リーンが撮った「ライアンの娘」にもそれが描かれている。

我々日本人からすると実に分かりにくい話だ。同じアイルランド島にあり、また人種も言語(一部はゲーリック)もほぼ共通しているというのに、今のなお関係がぎくしゃくしているのは、外の人間にははなはだ理解しにくい。

愚亭は10年ほど前にベルファストからダブリンまでアイルランド島一周ツアーに参加して、たまたま本作の舞台となったSligoにも立ち寄っており、本作の持つ独特の雰囲気をわずかながら感じることができたような気がする。