ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「ケイコ、目を澄ませて」@Amazon Prime

230609 ずいぶん久しぶりに邦画を見ました。下のポスター見ると、相当話題になっていたようです。2022年末公開ですから、まさにコロナ禍真っ只中に製作された作品です。エンドロールにもコロナ対策担当者の名前が載っていました。

スタッフ、キャストで、唯一知っている名前が三浦友和だけという邦画音痴ぶりです。たまたま最近会った、映画好きの職場の後輩が教えてくれ、偶然アマプラで見られることを知って早速鑑賞しました。

一般的には「澄ます」のは耳ですが、それができないケイコ、今はひたすらシャドウ・ボクシングに明け暮れます。何がどう不満だか分からないのですが、世間に背を向けてここまで来たようです。なぜか通っているボクシング・ジムの会長(三浦友和)はなにくれとケイコに目をかけてくれます。

そんな優しさ溢れる会長の期待に応えようとするかのように、毎日、トレーナー相手に取り憑かれたようにこぶしを振り続けるケイコです。汗びっしょりで自宅に帰ると、弟がカノジョとギター弾いて作曲の真似ごとをしている様子。無愛想で、手話しかできないわけですから、カノジョも居心地悪さで早々に退散です。

試合には負ける、ジムは解散で、悩み抜くケイコ、さてどうする?早春の土手をランニングするケイコに、負かされた相手選手が頭を下げて去っていきます。ふっきれたように、土手を駆け上がり、しっかり前を向いて再び走り始めるケイコです。

エンドロールに至る前に、ケイコには聞こえない日常の騒音だけが響きます。前を見据えたケイコの瞳がきらきらしています。

主演の岸井ゆきのが奥行きのある演技を見せます。笑顔は全体で30秒もないほど、いつも怒ったような表情が印象的です。先日見たばかりのTHE TUNNEL主役のフランス人女優、クレマンス・ポエジーを思い出していました。