ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「THE TUNNEL - 国境に落ちた血 - 復讐の執行人 - 」

230606 THE TUNNEL 2013年 英仏合作テレビシリーズ 3シーズン 全24話 2011年、デンマークスウェーデン合作シリーズ「THE BRIDGE/ブリッジ」のリメイクとか。

とっかかりは英国ケント州とフランス側パ・ドゥ・カレー間のユーロトンネル内、それもちょうど中間地点に置かれたフランス女性の切断された死体発見です。それも胴で真っ二つになっており、別人の死体をつなげたという、いささか常軌を逸した猟奇殺人事件です。

英仏の担当刑事が主人公。左は仏側代表、エリース・ワッサーマン警部/警視(クレマンス・ポエジー)、右側、英代表、カール・ローバック刑事主任警部(ティーブン・ディレイン

日本では二人ともほぼ無名です。エリーズはほぼ完璧なバイリンガルなのですが、カールの方はフランス語は挨拶程度ということで、全体の2/3は英語が使われています。それにしても、担当する英仏両警察署内では、ごく普通に英仏語が出てくるのは、やはり国境管轄という事情があるからでしょうか。

ひんぱんに署内の場面が出てくるのですが、どっちの警察なのか分からなくなるほどで、トンネルがあるとは言え、かくも頻度高く往復するものなのか、日本的感覚からすれば、信じられないほどです。

当然ですが、時代背景上、難民・移民問題ジェンダー問題、etc.、さらに主人公二人の家庭問題もたくみに絡ませて進行していきます。とくにカールは、温厚で基本優しい夫であり父親なのに、過去恋愛にはルーズで問題を起こしていたようで、それは現在進行形でもあるのです。

一方、エリーズは一見してわかるのですが、自閉症気味、アスペルガー症候群でしょうか、人嫌い、無愛想、コミュ力(りょく)に乏しく、よくこんなキャラで警部が務まると思えるほどですが、独特の勘で次々に事件を解決してきている実績がありますから、周囲からも高く評価されているというわけです。

カメラワークもすばらしいし、はらはら・どきどきの展開も実に見事で、脚本の妙にも驚かされる作品です。派手なアクションはほとんどありません。全体に、あの辺の気候もあり、また殺人事件現場が多く登場し、やや暗い印象は否めません。

ただ、見続けているうちに、このまったく可愛げのないエリーズへの感情移入が盛んになり、いちいち言動が気になります。それだけに、ラストは・・・・ちょっとここには書けません。悲しすぎますし、しばらくエリーズ・ロスに襲われそうです。