ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「椿姫ができるまで」仏映画祭出品作品@朝日ホール

130624 原題:TRAVIATA ET NOUS(トラヴィアータと私たち)[監]フィリップ・ベジア いわゆるメーキング・フィルムだが、その辺のものとは似て非なるもの。実に興味深く見た。丁度2時間で、ほぼオペラの展開に合わせて稽古風景が余すところなく映されている。普段、オペラファンが知ることのない裏側の世界が克明に描写されていて、よくぞそこまで撮ったなぁ、というのが率直な感想。

f:id:grappatei:20130625100819j:plain

とりわけプリマドンナナタリー・デセー(本人は自己紹介でドセーと発音しているから、これが本当なのだろう)が、スッピンのクローズアップをよく承知したものだ。しかも、彼女1965年生まれの現在48歳、容貌も体型も、とみに衰えたり、を実感してしまった。でも、歌も演技もすんばらしい!!当然、リハだから、本気ではないし、オクターブ下げて軽く歌っているのだが、熱がこもってくると俄然本気モードに突入。それは、まぎれもなく超一級品だ。「花から花へ」、エンディングのEsなど、楽~に出していたからねぇ。それに、元々女優を目指したぐらいだから、演技も抜群で、顔の表情の一つ一つに感心しっぱなし。

 

相手役のチャールズ・カストロノーヴォ、名前からしてイタリア系のアメリカ人、柔らかな発声で、優しいというか優柔不断のアルフレードにはぴったりだが、デセーの相手役としては、いかがかな、とチト疑問符。

 

もう一人のというより、こちらが本作では寧ろ主役に近いと思うのだが、演出のジャン=フランソワ・シュヴァディエ。かなりこれまでのスタイルとは違った形を追い求めている様子で、出演者にはとまどいも。完成品を見ないと何とも言えないが、斬新な演出の評価はどうだったのか、大いに興味を持った。

 

リハーサルは、当然ながら、繰り返し何度も行われていて、それらを縦横に組み合わせて作品として構成してあるから、時にスタジオでピアノだけ、或はオケの伴奏、時に本番の劇場(エクス・アン・プロヴァンス大司教館中庭)を使った場面などが、かなり複雑に入り乱れて進行していく。

合唱団には様々な国籍が含まれているため、共通語の英語で説明する必要があり、結構大変そう。日本人にはかなりハンディだろう。マエストロはルイ・ラングレ、オケはロンドン交響楽団ということで、マエストロはほとんど英語を使っていた。

 

一方のコレペティはイタリア人女性だから、すべてイタリア語で指示を出していて、出演者は英仏伊の三か国語は無理にしても、2カ国語は絶対的に出来ないと国際舞台では厳しいことになりそうだ。

 

ともあれ、普段見られないシーン満載で、オペラファンには堪えられない作品!

#46 画像及び動画は仏映画祭オフィシャル・サイトから