ぐらっぱ亭の遊々素敵

2004年から、主に映画、音楽会、美術展、グルメなどをテーマに書いています。

「サンシャイン/歌声が響く街」

140818 原題:SUNSHINE ON LEITH(リースはエディンバラ郊外で、海辺の小さな町)英 100分 [監]デクスター・フレッチャ(経歴を見ると、俳優としての出演作品は無闇に多いが、監督としては、これが2本目。日本公開に限ればこれが最初の作品)

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スコットランド製のミュージカルは初めてだ。大体、スコットランド製の作品自体多くはないから、当然だろう。日本人がこれまで知っているミュージカルとは、かなり趣きもスタイルも異なるというのが正直な感想。それもその筈、地元の人気バンド、プロクレイマーズが歌う数々のヒット曲をフィーチャーしているのだから、それを知っていれば、楽しみ方が格段に違った筈。そうでないだけに、ちょっと残念。

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スコットランドの田舎町に住む一家の話。アフガニスタンへの派兵から除隊して帰国した息子デイヴィーとその親友アリー。大喜びする父ロブと母ジーン、それに妹のイヴォンヌ。妹は、アリーの恋人でもある。街角でいきなり歌い踊り出す帰国兵で、「ああ、これはミュージカルだったんだ」ということが分かる。エンディングまで全部で10曲ぐらいか。特に心に響くほどの楽曲はなかったのが残念。感性の問題だが。

間もなく、夫婦二人の結婚25周年のパーティーがあり、そこでイヴォンヌに求婚するアリー。しかし、めでたかるべき席で隠し子がいたことがバレてしまうロブ。一方、当然、Yesの言葉を期待していたのに、そこまで考えていなかったイヴォンヌに振られ、愕然とするアリー。結局、イヴォンヌは看護・介護の仕事を究めようとアメリカに旅立ち、アリーは再び海外派兵に応じてしまう。

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その後、ロブが心臓発作を起こして入院したことがきっかけで、夫婦仲も元の鞘に収まり、また破局しかかったデイヴィーと恋人リズも、仲直りで、メデタシメダタシとなる。

前述の通り、最後のシーンがかなり大人数による歌と踊りで盛り上がる。それが邦題にもなった「歌声が響く街」の所以。ロケはエディンバラのど真ん中、国立スコットランド美術館前の広場である。そう言えば、この美術館に勤務するジーンが、夫に不信感を抱いた際、上司や同僚に慰められて歌い踊るシーンも、美術館内での撮影だった。

ついでに、何度か出て来るバーでのシーンは、すべてグラスゴーにあるバーで撮影されたとか。何でも有名サッカー・クラブの協賛があったからのことらしいが、詳細は知らない。

知っている俳優は、唯一人。出番が少なかったポール・ブラニガンのみ。出演者には、いわゆる美人女優、イケメン俳優はゼロ。ごく普通の、その辺にいるような人物ばかり。そういう意味でも派手さのまったくない、極めて地味なミュージカルと言っていいだろう。でも、見終わった後の感じは悪くない。寧ろ、さわやかな、人と人をつなぐ暖かさのようなものが残る。

冒頭、アフガニスタンの戦場シーンで、装甲車の隊列が突然地雷被害を受けるが、その時の地響きするような音響には、正直びくついた。隣のおばはんは、それこそ椅子から転がり落ちそうになった。

⬇なお、劇中歌われる"My heart was broken"は、1875エディンバラに創立のHibernian Football Clubの歌になっていて、チームが勝利した場面で歌われることが多い。それにしても、よく揃っていて、実に上手いのだ、これが。

⬆"Letter from America" 娘がアメリカに旅立つ前に父母によって歌われる挿入歌。 

⬆それぞれの思いを胸に、最後に流れる"500 Miles"

#67 画像はIMdb及びALLCINEMA on line、動画はYouTubeから